#49 ページ49
「おかえり」
「なんでっ」
「はは」
高校2年生の頃家に帰ると笑いつけながら昔お母さんが渡したであろう鍵を見せる男が家にいた。
「あいついつ帰ってくるの」
「知らない」
ｶﾞﾁｬ
なんでだろう。
神様は意地悪だ。
いつも夜中まで働いて一生懸命借金を返しているお母さんが今日は早く帰ってきた。
「お、おかえり」
にやりと笑う男。
ああもう最悪だ。
お母さんは状況が理解できないのか玄関で固まっている。
手に持っている白い箱が落ちる音がした。
「A」
そう私を呼ぶお母さん。
「おーおー、理解が早いもんで」
「渡さない」
「うるせぇな。もうお前に用なんてねーんだよ
A渡せよ。
その年頃の女は高く売れるんだよ」
怖い、怖い、怖い
「A！」
私を後ろに隠す形で立つお母さんに男は昔のように殴る蹴る。
止まらない暴力。
「やめてよっ」
泣いて喚いても止まらないその行為に私は行くから、一緒に行くからって言ってしまった。
にやりとする男がお母さんを地面に置いて私の元に歩いてくる。
「やめてっ！」
「っち」
後ろから抱きつく形で止めに入ったお母さんは呆気なく男に突き飛ばされてしまって鈍い音と共に動くなってしまった。
「お母さん！」
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作者名：志葉 紫
| 作成日時：2022年5月18日 18時
