後悔は溢れる ページ25
鏡花と彼女が出逢った時、始めて抱いた印象は「大人の女性」だった。
しかしほんの数秒でそんな彼女の印象は打ち砕かれると今度は身体と言葉遣いが合っておらず、思わず「気持ち悪い」と彼女を不気味に思った。
「だから、あんな子供みたいな口調を?」
「僕は別に気にして無かったから。余程の事だと思うんだ、記憶を失うって」
「……家族が居たのかも、覚えていないの?」
「うん。何もかも」
「……そう」
鏡花はそれ以上何も言わなかった。
これ以上は不毛な事であると納得したからだ。
暫く沈黙した後、敦が口を開いた。
「あの…。その、可能性の話なんだけど。もし、君の異能力の謎が解けて、電話の声にしか従わない夜叉を操れる様になれば探偵社の力の一つに…」
「ダメ!」
鏡花は突然、声を荒げて否定した。
「夜叉はもう、二度と…!」
彼女の瞳に浴びていた恐怖、芥川から言われた言葉を思い出した。
『夜叉白雪は殺戮の権化。他者を殺す時のみ、鏡花は意味を得る』
夜叉を使えば夜叉は人を殺めてしまう、彼女にとって異能力である【夜叉白雪】は恐怖の象徴として脳裏にこびり付いていた。
♪♪♪♪…♪♪♪♪…
鏡花の手の中から鳴り出すアラーム、そして振動。
勝手に通話状態となった。
《【夜叉白雪】よ。鏡花に嘘の世界を教える者に罰を与えよ》
その言葉を聞いた刃が敦の胸を貫いた。
「ガハッ…!?」
舞い踊る血飛沫と倒れる身体に鏡花は絶句した。
「ふふふ、害獣の血でも飛沫く様は美しいのぅ。そうは思わぬかえ…愛しの鏡花や?」
彼女の目前には凛と佇む花魁、紅い番傘を開いた紅色の髪と瞳は鏡花を慈しむ母の眼差しで鏡花を憂いた。
「
彼女は敦を倒れた敦を憎しみを込めた目で見下ろし、その足で踏み躙ると鏡花に振り返り再び微笑んだ。
「じゃが、もう心配は要らぬぞ。何も患う事はない、
「……彼女はもうポートマフィアには戻らない。彼女の力は、探偵社の仕事で振るわれるべき物だ!」
震える腕に力を込めて立ち上がろうと足掻き、彼女に向かって叫んだ敦。
ポートマフィア五大幹部の一人、その名を尾崎紅葉。
唇を震わせた彼女の頬に涙が伝った。
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ほんばし(プロフ) - エレンNo2さん» コメントありがとうございます。面白いと言ってくださり、ありがとうございます。自己満足で書いている作品ではありますが、そう言ってもらえるととても嬉しいです。ありがとうございます! (2023年1月11日 17時) (レス) id: cf71fd7287 (このIDを非表示/違反報告)
エレンNo2 - 僕…文豪ストレイドッグス大好きなんですけど、すっごいおもしろかったです! (2023年1月11日 16時) (レス) @page2 id: 84c79903b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほんばし | 作成日時:2020年1月14日 21時