クロスロード (ページ5)

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涙の意味ページ5

［S.Hirano side］

少クラの収録。

次の収録でAの誕生日サプライズをやる予定が、急遽今日になった。

Aにとって、19歳最後のステージ。

それを本人もちゃんとわかってるからなのか、今日はいつもよりも笑顔が多くて一段とファンサービスをしている気がする。
よかった、と安心した。ここ最近の彼女はどうにも形容し難いほど何かに悩んでいたように感じていたから。
Aの笑顔は、俺を笑顔にしてくれる。

「A！」

「はい！」

「歌の前に…今日はもうすぐはたちの誕生日を迎える彩香にメッセージを送りたいと思います」

俺が東京にきてから一緒に活動してきて、気がつけばいつもそばにいてくれた人。時間にしたらそんなに長くはないはずなのに、もうずっと一緒にいるようにAの隣は心地が良かった。

Aがいたから…
この世のありとあらゆる明るいもの、愛や、夢や、希望みたいな光が、決してまぼろしなんかじゃないって信じられる。

全員じゃないにしろ、自分の大事な人を一緒に大事だと言ってくれるファンの人がいてくれること。こんなに幸せなことはない。
これもきっと、Aだから。

「彩香、誕生日おめでとう。ずっと隣にいてくれてありがとう。これからもずっとよろしくね。」

「……ありがとう、紫耀」

For youというオリジナル曲の歌詞が本当に俺の心境にピッタリだった。
今は、心を込めて、Aのために。

いつものようにアイコンタクトを取ろうと彼女の方を向くと俺に背中を見せるように立っていた。歌う声は、珍しく微かに震えている。

きらりと光る涙が、美しかった。

胸がギュッとどうしようもなかった。
彼女の涙を初めて見て、考える間も無く、俺はAを抱きしめていた。

「……ごめん、」

「A、？」

「……っごめん、ごめんね」

ねぇ、A。

あの日の君の涙の意味がやっと今頃になって分かるような気がするよ。

なにも気づけずにいたあの日の俺を、どうか許してよ。

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