クロスロード (ページ4)

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異変ページ4

［ K.Takahashi side］

Aちゃんはいつからか悲しそうに笑うようになった。何かを諦めたように、でもどこかとても愛おしそうに。

突然消えちゃいそうで怖かったんだ。

…そんな時だった。
リハ中に彼女に異変があったのは。

いつものようにAちゃんは高難度のアクロバットを披露して綺麗に着地…したものの、その体制から3秒ほど動かなくなった。

怪我でもしたのかと思う、らしくない動き。

休憩とともに彼女へ近づこうとすると、Aちゃんは走ってリハ室から出て行った。
後を追いかけると、女子トイレから荒い呼吸が聴こえてくる。

「Aちゃん？大丈夫？」

「……かい、と？」

苦しそうな呼吸を抑えるように話す彼女が心配になり中へ入ると、洗面台に寄りかかって膝を抱えて座り込むAちゃんがいた。

「っAちゃん！？」

「……お願い。私のバッグからポーチ、持ってきて？誰にも、バレないように」

「わ、わかった！」

誰にもバレないように、なんて言葉を深く理解することすら出来ないほど混乱していた。

バッグを漁り取り出したポーチの中を一応確認するとたくさんの薬が入っていた。それが何を意味しているかは俺にだってわかる。

Aちゃんのところへ戻るとさっきよりも苦しそうに胸を掴んでいるAちゃんを見てられなくて、持ってきた水と一緒に薬を飲ませた。

すると、少しずつだけれど呼吸が穏やかになる。それに安心して俺もヘロヘロと膝を曲げた。

「……バク転したらさ、急にステージが底無しに見えちゃって」

「……」

「バカだよね、何百回とやってきたのに」

「…Aちゃん。最近ずっと変だよ？何を考えてるの？何を、抱えてるの？」

「……」

「ねぇ、辛いなら頼ってよ。全部はまだ俺には無理かもしれないけど、半分くらいならAちゃんの抱えてるもの持てるかもしれない」

思いの丈を伝えた。助けたいんだよ。俺がいつも助けてもらっているように俺だってAちゃんを守りたいんだ。

そう思っていたのに、彼女は何故か俺の言葉を聞いてまた＂あの笑顔＂で微笑むんだ。

「かいちゃん、ごめんね」

「え？」

「この苦しみも悲しみも私だけのものだよ。だから、あげられない。誰にも渡さない。」

「…Aちゃん、」

「海人は笑ってくれてればいい」

「……」

「笑ってよ、おねがい」

どうしてそんな泣きそうな顔で言うのか、あの頃の俺にはまだわからなかったんだ。

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