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なんでもない関係、だと思ってる。……今も。おそらく俺は気づいていないだけ。ていうか知らない。それの名前を。
気分はその日のしっぽの向きで変わる猫のように。からかって遊ぶような感覚。だけど、その中でも彼女だけは。多少誠実にしたい気持ちがあった。友達の妹だから、とかじゃなくて。
「………はあ」
「ごめん、困らせる上に面倒くさくて。本当ごめん」
そのつもりのため息じゃない。でもAはらしくなくビクビクして、目を逸らした。……違う。息をついたのは、安心したんだ。てっきり、無意識で酷いことをしたか言ったのかと思っていたから。
というか、Aには嘘だってやっぱり見抜かれていた。この先も言わないつもりだったけれど、こうなったら仕方ない。本当のことを知りたいのはAも同じ。
あの日、つまんねーことしてる男二人組から女性を庇って怪我をした。そこへあむが通りかかったんだ。失せろと言ってもその通りにならなくて、血を拭いてくれた。
一応その礼で、送るついでにあの遊園地に立ち寄っただけ。
「怪我……って」
「そういう顔すると思ったから黙ってろってあむに言ったんだよ。もう治ったし、アイツには言うなよ」
「う、うん。……あ、ねえイクトさん。もうひとつ訊いていい？」
質問には答えたのに、まだ表情は晴れない。
もしかして本命はふたつめの方なのか。彼女はキュ……と腕の辺りを摘まんだ。そして、次は俯いたまま告げた。
「私、イクトさんのあんな顔初めて見た。普段とは違う、素……みたいな。あのときコーヒーカップで、あむと何の話をしてたの……？」
カタカタと掴まれたところは微かに震えてる。あむと何を話したって、それは……。別に話すのは構わないけど、先にこっちをなんとかした方が良さそうな気がする。
向かい合うように体の向きを変えた。自由な片手をAの頭上に持っていき、触れる直前でちょっと留まる。
たしか、歌唄が以前言っていたっけ。……本当に効くのか？ 疑いは残るけれども試してみることにした。行き場をなくしていた手をAの肩にまわす。そうして、そのままこちらへ引き寄せた。
「……え、」
「大丈夫か、A」
囁くように言ってから。胡座をかいていた足の片方を立てる。彼女の体を抱きしめやすいようにだ。
自由になったもうひとつの手も掻き抱くようにまわしたとき、Aの体が強ばっていることに気づく。緊張してんのか？ 可愛い。
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華奈(プロフ) - 更新待ってます！ (2022年9月5日 22時) (
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作者名：東雲れーた | 作成日時：2022年3月18日 20時
