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事件 弐 ページ33

「中毒症状に似ていますね。まだ詳しくは分かりませんが、何かしらの毒物を摂取したと見て、ほぼ間違いないでしょう。」

やってきた救急隊員は、澤田氏を運びつつ、その状態を確認して云った。

「そうですか……。こちらの方でも調べておきます。」

それに答えたのは、茶色の帽子と外套が似合う恰幅の良い刑事だ。確か先ほど、他の刑事に「目暮警部」と呼ばれていた。

「直ぐに周辺を確認しろ!」

その目暮の声で、鑑識官らしき人が何やら道具を持って辺りを検査して回る。そしてその目暮の傍らでは、毛利と、それから安室と呼ばれていた優男が何やら話をしていた。どうも二人は、目暮と顔見知りのようだ。澤田氏が倒れたその当時の状況を、客目線と給仕目線とで説明しているらしく、時折広間を指差すような仕草が見られた。
敦達を含めた招宴の参加者は、みな広間の隅に固まっていたが、その検査のために別室へ移動させられるらしい。前方が移動するのに倣って進もうとした、その時。

鑑識の一人が、厨房の扉を、開けた。
瞬間、ふわりと漂う、臭い。

「っ!!」

ーー最早それは、肉食獣の性。

あまり慣れたくはないけれど、その本能ゆえに過敏に反応せずにはいられない、鉄の臭い。
考えるよりも先に、自分の体は動いていた。

「ちょ、アンタ!!」

誰かが呼び止める声を振り切って、敦は走り出した。それは、厨房という場ゆえの獣畜のものでは無かったのだ。

厨房へ走り込むと、その臭いは、直ぐ隣に設けられている休憩室のような小部屋から臭っている事が感じ取れた。
迷う事なくその部屋の扉を開け、そしていくつか設置されたロッカーの一つに手を掛けた。
そして、勢いよく、開く。

「……矢ッ張り。」

ぽつり。遣る瀬無さを孕む声を漏らすと共に、どやどやと数名の声が聞こえてきた。
敦は、小部屋から出る。そこには、目暮を含む数名の刑事・鑑識官と、毛利、安室。なぜかその後ろにはコナンが居た。

「……コナン君は、入らない方がいい。」
「へ?」

そして敦は、彼らに向き直る。そこにアーサーは居ない。おそらく、自分が放っぽり出してしまった小林氏のところに居てくれているのだろう。というか彼ならば、敦の行動の理由も知っているのかもしれない。

敦は、自分を落ち着けるように一つ息を吐いた。

「突然現場に這入ってしまって、すみません。それで……。
……こちらの()()の確認も、お願いします。」

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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました! (12月24日 19時) (レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 大好きな作品です…! (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え!?!?!?!更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ!!!!更新待ってます!!!!!! (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菫色 | 作成日時:2018年4月29日 20時

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