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或る招宴 壱 ページ13

「中々似合っているぞ、敦。」

国木田の真っ直ぐな褒め言葉に、敦は何だか照れ臭くなって頰を掻く。かっちりとした洋装は、然れど思っていたほど動きにくくは無かった。そう云う素材を使っているらしい。それは、武闘派の敦にと、揃い服(スーツ)を選んでくれたアーサーの気遣いに違いない。
ーーそう、敦が身につけているのはいつもの服ではないのだ。
黒の(ジャケット)に明るい灰色の襟締(ネクタイ)。黒の帯革(ベルト)は端が長すぎることなくぴたりと合っており、褂の胸衣嚢(ポケット)では手巾の赤がさりげなく主張している。正装と云うよりは、正に招宴の為の服装(ドレスコード)といった趣だ。

「へェ、良く仕上がったじゃないか。」
「敦さん、かっこいいです!」
「ボクも良いと思うよ。」
「……似合ってる。」

社員たちの賛辞に敦がますます頰を緩める。
すると、其れを察したかのようにアーサーがひょっこりと姿を現した。

「敦ー、準備出来たです?」

彼もまた、普段よりもかっちりとしたスーツを身につけている。敦のものとは構造の違う三つ釦の褂は彼の脚の長さを強調している。また全体として細身の、所謂“モデル体型”がスーツによって引き立てられている。流石は英国人、と思わず惚れ惚れするような格好良さだ。

「いつでも行けます!」
「了解したです。ーーそれと、独歩。治は何処です?」

アーサーが問えば、国木田は苛立ちを隠せない様子で答える。

「あの唐変木なら、『入水に行く』とか何とか云って社を出ていった。ったく、今頃何処の川で流れているのか……」
「独歩は大変ですねえ。其れじゃあ、敦、行くですよ。」

聞くだけ聞いて、如何やら国木田を助ける心算は無いらしい。同情の言葉を一つ出して、後は敦の方に向き直った。
そしてそのまま、敦を連れ立って社を出ようとしたその時だ。

「ーー敦、アーサー。」

此処まで黙っていた乱歩が、声を上げた。

「気をつけなよ。」
「え、」

何やら重々しく告げる乱歩に、敦は戸惑う。然しアーサーは、にこりと笑った。

「“分かっている”ですよ。折角です、お土産でも持ってくるです。」
「楽しみにしてるよ。」

そう云って、アーサーは社の戸を開いた。二人の遣り取りに気を取られていた敦は、其処で慌ててアーサーに続く。
二人は、今度こそ社を出た。

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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました! (12月24日 19時) (レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 大好きな作品です…! (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え!?!?!?!更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ!!!!更新待ってます!!!!!! (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菫色 | 作成日時:2018年4月29日 20時

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