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「ーー却説、そろそろ良いですか? “コナン”?」

会話を中断したかと思えば、急に“居ない筈の”コナン君に話しかけ始めたアーサー。彼は、徐ろに外套の裏地に触れると、そっと「それ」を摘まんで卓の上に置く。
おそらく、盗聴器の類いなのだろう。それも、“コナン君”が取り付けた。
敦は、言葉を紡ぐのをやめた。それに一つ頷いたアーサーは、今度は外套の衣嚢から小さな機械を取り出す。其れは、敦には見覚えのあるものだ。
ーー盗聴器、か。

『コナン君、どうしたの?』
『腹でも痛えのか?』
『大丈夫ですか?』

子供たちの声が聞こえる事からしても、その予想は間違ってないらしい。アーサーは、念を押すように人差し指を口元に立てて見せた。今度は、敦が頷く番だった。

「何を驚いてるです? 全く、“本職”相手には未だ未だ及ばないですねえ。」
『っ、いつから!』
「最初からです。君の行動は、不自然極まりなかったです。」

淡々と話しつつも不敵に笑うアーサーを見て、敦は「矢ッ張り、何処か太宰さんに似てるな」と漫然と思った。

「其れでは、また何処かで会うのを楽しみにしてるですよ。Mr.Sherlock?」

彼の青い瞳が煌めく。不敵に、然し心底愉しそうに。

そして次の瞬間。小さく、ぐちゃりと音がした。云うまでもなく、アーサーが盗聴器を潰した音である。

「却説、僕たちもそろそろ帰るですか。横浜へ。
ーー其れと、諸々の答え合わせにも付き合ってあげるです。」

何やら勿体ぶった言い方が気になったが、取り敢えず敦は、残りの紅茶を一気飲みした。

「はい!」

ーー斯くして、二人の若き探偵は“探偵”との邂逅を終えた。

此れが吉と出るのか兇と出るのか。其れを知る者は「未だ」誰も居ないーーより正確に云えば、役者は「未だ」出揃っていないのだ。
もう一つの怪奇譚は、幕開けを待っている。

此処迄は、単なる序章に過ぎないのだ。




(ところで、代金は僕が払うですよ?)
(え……い、良いんですか!?)
(こういう時は先輩が払うもの、です。)

或る招宴 壱→←九



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美園(プロフ) - 今日はじめて見ましたがとても惹き込まれました! (12月24日 19時) (レス) id: 69d991c9f1 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 大好きな作品です…! (6月29日 17時) (レス) @page1 id: 7b1be7f011 (このIDを非表示/違反報告)
むる - え!?!?!?!更新なくて残念です泣泣泣めっっっちゃくちゃ気になります………すごく読みやすくて設定も凝っててめちゃめちゃ良かったです。 (2022年8月14日 2時) (レス) id: 6ed738b467 (このIDを非表示/違反報告)
ししゃも(プロフ) - 続きが凄く読みたいです。更新お願いします! (2022年7月27日 8時) (レス) @page43 id: 4d9c9f1a17 (このIDを非表示/違反報告)
舞琴(プロフ) - めちゃ続きが読みたいですっ!!!!更新待ってます!!!!!! (2022年4月23日 23時) (レス) id: 6e4f314873 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:菫色 | 作成日時:2018年4月29日 20時

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