その妻、焦がれる ページ6
あまりにも事細かい。
まるでいつも見てるような書き方だ。
しかも上品ながら「子供を不当な場所へ寝かせている」と暗に言っている。
ハリーがのそのそリビングに行くのを視界の端で見送り、手紙の封を開けた。
見たことの無い紋様のシーリングワックス。
…ほのかに香る甘い香りは……チョコ?
便箋を取り出し、2つ折りにされたそれを開こうとすると横からバッと手紙を奪われた。
「シーナ!勝手にソレを読むな!」
顔を上げると、真っ赤な顔をして怒っている叔父さんがそう怒鳴る。
『…どうしてですか?これは他の誰でもない、私への手紙なんですよ?』
「黙れ!言う事を聞かないなら一週間食事抜きだ!」
子供の癇癪かと思う程に怒り狂い、叔父さんは手紙を真っ二つに引き裂いた。
何度も繰り返し破り、高級な便箋は見るも無惨な姿になった。
勝ち誇ったように笑う叔父さんを冷静に睨み付け、鼻で嗤ってやる。
「なんだその目は!」
『いいえ?』
手を振り上げた叔父さんから離れ、変わらず冷淡な目で睨む。
叔父さんがさらに喚こうとしたが私の目を見ると押し黙った。
「本当に…気味の悪い目だ。」
『それはどうも。』
叔父さんの目に映った赤い目の少女は嗤う。
私は生まれつき両目が赤い、ガーネットのように暗めの赤。
しかも不思議な事に、髪は黒なのに毛先を光に透かすと焦げ茶色ではなくルビーよりの赤い色に透ける。
確かに、変わり者や不思議な現象…それこそ【魔法】を毛嫌いする叔父さん達からしたら私はさぞかし異物に見えていることだろう。
だからこうして、私が言外に黙らせると叔父さんは悔しそうにする。
…人の手紙を破り捨てたんだ、これくらいプライドを傷付けても良いだろう。
叔父さんはキツく私を睨み付け、そのままリビングへ帰っていく。
『別にアンタらにどう思われようが気にしない。』
玄関に残された私は吐き捨てた。
ーー私を慈しみ、優しく愛してくれる人が居るんだから。
…まあ、未だに再会出来てないんだけど。
この10年間、出来る限り彼を探し続けている。
しかし元々手掛かりが何一つ無い。
彼が今何をしてるのかも解らない。
……けど、絶対彼も私を探してる。
約束してくれたから。
『…零さん。』
恋い焦がれた彼を思い浮かべながら、私は愛しい名前を呟いた。
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作者名:四條暁 | 作成日時:2023年4月20日 0時