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『零さん、お疲れ様。』
零「ん…真琴。君も大変だったな。」
先ほどまでの賑やかさから一転、厨房の方では零さんがコーヒーを静かに飲んでいた。
笑顔で迎えられ、私は手にしてた食器をシンクに置く。
『…ってあれ?もう休憩終わり?』
スポンジに洗剤を付けてると、不意に彼が飲み終えたらしいコーヒーカップをシンクに置いた。
そのまま私の隣に立つと、予備のスポンジで食器を洗い始めた。
零「元々喉が渇いてたから飲んでただけだ。それに、この量を君一人に押し付けるのは出来ないさ。」
『…ありがと。』
少しの申し訳なさを呑み込み、そう呟くと「当たり前だろう?」なんてイケメンな台詞が返ってきた。
カチャカチャと食器を洗っていき、ふと店内の様子を見てみる。
零「この勝負、双子が勝つな。」
『やっぱり?』
私の様子に零さんがそう口を開き、思わず苦笑した。
…まぁ必然的に鏡夜先輩がこんな面倒な事に参加するとは思えないし。
零「今はリードしてる銛之塚君が、埴之塚君を残してまで泊まるとも思えないしな。」
『となると残るのは環先輩とドッペル。けどなぁ…。』
あくまで私と零さんは美鈴さんに【雇われてる従業員】だから口出しはしなかったけど、正直言ってどちらも心配でならない。
環先輩はハルヒにアピールする為にまた無茶するだろうし…。
ドッペルはドッペルでまた変なイタズラをされたら堪ったモンじゃない。
『あ〜あ、折角の夏休みなのになぁ〜…。』
ハルヒじゃないが、これでは学校に居るのとあまり変わらないだろう。
「確かにな」と零さんが苦笑しながら頷く。
『折角の軽井沢だし、どっか遊びに行きたいしなぁ〜…。』
零「なら明日辺り休憩を貰って観光にでも行くか?」
『えっ、良いの?』
零「あぁ。実はさっき美鈴さんから、その話をされたんだ。」
思わぬ事に私の機嫌は良くなり、もうどっちが勝とうがどうでも良くなった。
普段なら学校関係者に見られない為に外出は控えてて、ハロの散歩も早朝が多かった。
デートも落ち着いて出来なかったし、ある意味ではご無沙汰なのかもしれない。
『じゃあさじゃあさ!ここの近くにあるカフェ行きたい!』
零「勿論。久しぶりのデートだから、安心して俺にエスコートさせてくれ。」
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作者名:四條暁 | 作成日時:2021年8月9日 5時