その2 ページ15
横たわる私を、拐った男が上から見下ろす。
「お前、何勝手に喋ってんだ?」
『………』
「無視してんじゃねぇよ!!」
『がっ!!!!』
腹を思い切り蹴られる。
痛い。痛い。痛い。
あふれでる涙で前が見えない。
バカデカイ心臓の音と、自分の荒い息が静かな工場に響く。
「おい、あんまりやりすぎるなよ」
「うるさい。どうせ奴を殺ったらコイツも殺すんだ。いいだろ」
「一応人質だ。奴が来るまでは」
「チッ…」
どうやら助かったようだ。
ガタリと椅子が立てられる。
「しっかし、いい女だよなぁ」
別の男が寄ってきた。
「はぁ?お前何言ってんだよ」
「いやいや、殴られた後だからあれだけど、よく見たらいい面してるぜ?体も」
ねめつくような視線でじろじろとこちらを見る。
気持ちが悪いが、体は動かせない上に痛さで何も出来ない。
「なぁ、奴にとって屈辱的なことってなんだろうな?」
手が頬を撫でる。
ぞわりと全身を悪寒が走る。
『やめ……ろ……』
「…あはは。いいねぇその顔。ゾクゾクする」
頬を撫でる男の手が、下がっていく。
そして服に手をかけた時。
その手が、宙に舞った。
「ああああああああああ!!!」
血が吹き出す腕を見て後ろにひっくり返る男。
飛んだ手が血を撒き散らしながらくるくる回ってその横に落ちた。
「なんだ!?」「何が起きた!!!」
男達が異変に気付いて騒ぎ始めた。
混乱する私の横で、誰かがそっと囁いた。
「A、待たせたねィ。もう大丈夫でィ。目、瞑ってな」
『総悟!』
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作者名:ひつじ | 作成日時:2020年4月18日 16時