その2 ページ11
『ちょっ…総悟!?』
小さな抵抗を続けていると、彼が口を開けた。濡れた指に冷気が当たる。
「何でィ」
『何でィって…こっちが何だよ!ちょっ…指!!』
混乱して上手く言えない私に対し冷静に指を舐める総悟。くすぐったいような気持ちいいような不思議な感覚に陥る。
「だから温めてやってんじゃねーか」
『温めてって、どこの世界の人が舐めて温めるんだよ!』
「え?Aも温めてくれるんですかィ?」
『んなこと言ってない!!』
「…はぁ」
小さくため息をついて私の手を解放する総悟。
つぅっと唾液が伝った。
「次からは灯油は流してからで」
『アンタが舐めたんだろ!!それに次は無い!』
「口直しが欲しい」
『話聞いてる!?』
言いながらも左手を隠す。「口直し」とやらで舐められても困る。コイツならやりかねないし。
「おいA、ちょっと」
ついで数歩後退り距離を置いた私に手を伸ばす総悟。左手は渡さん。
身構えるも彼の手は私の顔へ。
そのままぐいと引き寄せられ、唇に柔らかいものが当たる。
それがキスだと気付いた瞬間に、彼の胸板を押した。しかし引き剥がそうとしても、さっきと同じように微動だにしない。
『ーー!!ーーー!!!』
唇が塞がれているから何も言えない。
と、その瞬間を逃さず舌が押し込まれてきた。
先程私の指を舐めていたように、私の舌に絡ませていく。
必死に抵抗するもまるで動かない。そのうえ息ができないので苦しい。
『っあ!』
ぱっと顔が引き剥がされ、思い切り酸素を吸い込む。バクバクと心臓がうるさいのも、顔が熱いのも、きっと酸欠のせいだ。
荒い息のまま目の前の総悟を睨むと、彼は悪びれもせずに、
「口直し。うまかったぜィ」
と言ってニヤリと笑った。
『そう「あ、俺今日銀八の奴に呼ばれてるんで、ちょっと行ってくるわ」
私が何か言う間もなく、カバンを持って教室を後にする総悟。
残ったのは私と空のポリタンクだけ。
冷たい教室で冷えていたはずの私の指は、温かさを持っていた。
冷え性 完
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作者名:ひつじ | 作成日時:2020年4月18日 16時