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男と娘、2人の奇妙な生活が始まった。


娘の作る料理は絶品だった。


いつもは好んで口にしない魚や野菜を娘は上手く料理した。



言葉にはしないものの黙って次々と男の口に消えていく食べ物を見ているのが娘は幸せだった。



ある満月の夜。



酒を嗜む男の隣で娘は月明かりに照らされる男の横顔を見つめていた。


『なんだ。俺の顔に何かついているのか』


男は柔らかく笑みを向けて娘の頬をくすぐる。



『いいえ、宿儺様のお側にいられるのが嬉しくて』


『ならば永遠に隣にいることを許可してやる。
光栄だろう?』



娘の桃色の唇から声が出る前に、男は優しく口付ける


驚いた娘の細い体を抱き寄せ、深く、深く舌を絡めた。



娘にとっても、男にとっても初めての愛のある行為



甘く痺れるような時間は、月が沈んで行くまで続くのだ。




月と交代に太陽が顔を覗かせようという時


男の腕の中で娘は眠っていた。


初めて会ったときより柔らかくなった温かい体を抱き、男は思った。




“こいつを食ってしまおうか”




美味そうに育ったものだと口元を歪ませる。

その時、腕の中の娘が柔らかく笑った。


娘が男の名を呼ぶ温かい声。


慈悲深い心。


男とは全く違う娘。


弱く儚い娘を壊してしまわないように抱きしめる。



『愛している、かもな。』



花のような優しい娘の香りに眠気を誘われて男は眠りに付く。


そして2人は夢でまた会うのだろう。

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作者名:夕暮れ | 作成日時:2021年7月9日 21時

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