想いれ ページ3
部屋を出て談話室に行くと、ソファにギルガメッシュが当たり前の様に座っていた。
Aが近付くと、ギルガメッシュが顔をこちらに向ける。
「起きたのか」
「うん。隣りに座ってもいい？」
微かに彼が頷いたのを見て、Aは隣りに腰掛ける。
「それは何だ？ そんなの付けてたか？」
「ああこれは、何故か枕元にあって。それで何故か付けなきゃって……」
Aが普段身に付けていない髪留めを見て、ギルガメッシュは問い掛けた。
当の彼女からは、答えになっていない返答が返って来る。
ギルガメッシュが見せろと言う様に手を出して来たので、Aは髪留めを外して、彼に手渡す。
彼はそれを頭上に掲げて、暫く吟味し、軽く握った後に、Aに返した。
何か分かった、とAが問いを投げると、
「強い想いが込められているのは分かった。
これを渡した奴は、相当貴様に想いれがあったのだな」
「ここの世界の人が、枕元に……」
「それは無い。その髪留めは、貴様がまだ元の世界にいた時に貰ったものだ」
ギルガメッシュの言うことが本当なら、Aは元の世界で、この髪留めを誰かから貰った事になる。
しかし、誰が？ 何故今まで自分は、それを覚えていない？
「どうして今になって……」
「それは、貴様があのウィリアムという雑種から、冬木市がこの世界に実在していると聞かされたのと、関係あるのではないか」
ギルガメッシュには既に、冬木市が実在している事は話した。
今回は夏休みの終わりが間近に迫っている為、冬木市には行けなかったが、来年の夏休みには行こうという話になったのだ。
冬木市がこの世界に実在していると聞いて、それをきっかけに自分が忘れている記憶を思い出そうとしている？
簡単に言えば、そうなる。
一体、誰がこの髪留めを自分にくれたのだろう？
元の位置に留めた、髪留めを弄りながら考えるAの横顔を、ギルガメッシュは憂う様に見つめていた。
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作者名：カフェラテ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shazam03271/
作成日時：2020年9月27日 16時
