Memento(虫の表現あり) ページ2
あれ、ここは？
Aは真っ白い空間の中にいた。
見渡せば見渡す程、白い空間が広がっている。
立ち止まっていては何も始まらないと思い、Aは歩みを進めた。
歩き始めて暫くして、Aは久しぶりに彼の背中を見つけた。
彼−−そう、言峰綺礼である。
Aは綺礼に声を掛けようとしたが、しかし。
「な、何で」
Aはいつの間にか綺礼の隣りに現れた、ジル・スーパーを見て戸惑いの声を上げる。
綺礼はジルと楽しそうに話し、そのまま2人は恋人の様に手を組んで、Aの前から歩き去ろうとした。
どうしてジルがここに？ 彼女がどうして綺礼の隣りに？
「まっ、待って……！？」
2人を止めようと前に出ようとしたAの腕を、誰かが掴んだ。
驚愕して見ると、それはA自身だった。
もう1人のAは、元の身長に戻っていて、妖艶に微笑んでいた。
Aが出したこともない、甘く蕩ける様な声色でもう1人の自分が言う。
「貴女の居場所は、あちらではないでしょう？」
もう1人の自分の服の袖口から、大量の蟲達がAの身体を覆い尽くしていく。
蟲達に埋め尽くされていく最後までAは、綺礼に忘れられたくないという思いが、何故か残った。
「はっ……」
喘ぎ、Aは目を覚ました。
慌てて身を起こし周りを見ると、そこはいつもと変わらない、寮の部屋。
夢だったらしい。
何故今の様な夢を？
思考しながらベッドから出ようと手を動かすと、何かが当たる感触がした。
見ると、枕元に髪留めがある。
身に覚えがないと思いながらそれを握り締めると、先程の夢の内容のおかげで、落ち着かなかった心臓が落ち着きを取り戻す。
手を開いて髪留めを見ると、それは白い薔薇に黒い蝶が止まっている装飾だった。
こんな髪留め、持っていたっけ？
でもどこか懐かしい感じが……。
ま、いっかとAは思い、髪留めを身に付ける。
そのままAは、部屋を後にした。
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memento＝忘れないで、思い出して
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作者名：カフェラテ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shazam03271/
作成日時：2020年9月27日 16時
