短編集 (ページ1)

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卵焼き(進撃・クルーガー夢) ページ1

マーレでの本部の仕事を終えて家に帰ると、彼女が待っている。

胸糞悪い仕事をした後に、家に帰っても彼女の笑顔を見ると癒される。

「ただいま」

「お帰り、エレン。今、晩御飯出来たところだよ」

エレンの妻－－Aが、笑顔でそう言ってくれる。

キッチンへと足を運び、メニューを見ると。

「卵焼きか」

「そう。ちょっと今日、他のメニューが思い付かなくて」

Aが1番得意な料理であり、そして－－。

俺が最初に食べた、彼女の料理でもある。

Aは、料理があまり得意な方ではないが、卵焼きとなると話は別だ。

甘過ぎでもなく硬くもない。

優しい素朴な味だ。

エレンが卵焼きを食べる様を、Aが目を輝かせながら見ている。

感想を待っているのだ。

もぐもぐと咀嚼し、飲み込んだ後「美味しい」と言う感想を告げると、彼女は嬉しそうに顔を綻ばせた。

「嬉しい！エレン愛してる！！」

「抱き付くな。食事中だぞ」

肩に抱き付いて愛情を表現してくるAを、エレンは嗜める。

彼女は由緒正しい、マーレ人だ。

エレンは自身が、エルディア人である事を明かしていない。

彼女はエルディアのした事を、畏怖してはいるがエルディア人を嫌ってはいなかった。

だが、もしエレンがエルディア人であると明かしたら彼女はどう思うだろうか。

だから願わくば……。

このなんでもない、平和な日常が続きますように－－エレンは不謹慎ながらも、そう願わずにはいられなかった。

(了)