その道の先へ－謎のプリンス① (ページ11)

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無言呪文ページ11

2限目はスネイプによる、闇の魔術に対する防衛術だった。

内容は無言呪文で、スネイプは2組のペアを作り、実践する様指示を出す。

「Aは、ジルと組む様に」

「えっ？」

「よろしくね、A♡」

戸惑うAを余所に、スネイプはさっさと組ませると早足で歩き去り、他のペアを見に行く。

ジルは語尾にハートが付きそうな甘ったるい笑み(いや実際に付いていたかも知れない)で呼び掛けながら、こっちに近付いて来る。

もしかして授業が始まる前に、スネイプ先生と打ち合わせでもしていたのだろうか？

有り得ないと考えたかったが、ジルならやりそうだ。

スネイプと恋人同士だと言うジルなら、彼を操る事も容易い……というところか。

ジルに悟られず、ゴクッと生唾を呑み込み、彼女と向かい合う。

何かを企んでいるのがバレバレな笑みを貼り付け、ジルが杖を向けて来る。

Aが杖を向けるより早く、ジルが杖を振るう。

杖先から出てきたのは、緑色の閃光－－死の呪文だ。

「エクスペリアームズ！」

無言呪文が不得意なAは、杖を無事に取り出し応戦の構えを見せた。

ジルの放った死の呪文は盛大に掻き消され、彼女の舌打ちが聞こえた。

「ちっ！」

「何かあったのかね？」

他のペア組みを観察していたスネイプが異変を察知して、様子を見に来た。

Aが答えようと口を開く前に、ジルが言った。

「Aが死の呪文を放って来たんです！私はやめてと言ったのに！！」

泣き真似をしながら告げるジルを一瞥し、スネイプは本当かねとAに訊ねる。

彼女自身真実を告げたかったが、それをすればジルがまた余計な嘘を付くだけだ。

スネイプも恐らく嘘だとは、承知しているだろう。

願いながら彼女は、すみませんと頭を下げる。

頭を下げながらジルを伺う。彼女は顔を覆った手の隙間から、こちらを嘲る如く見ていた。

ジルが以前言っていた、夢小説の夢主だかなんだか未だに理解出来ないが、こんな人に嘘を付くなどしても許されるのだろうか？

スネイプに謝る彼女を、皆は同情する様に見ていた。