1人の青年 ページ33
「立ち聞き、とは感心しないな」
「！！」
3人が立ち去り、そろそろ寮に戻ろうとすると、背後から声が掛かる。
振り向くとそこには、縦縞模様の入った灰色のスーツに、赤いネクタイをした青年が立っていた。
Aが見た限り、ダームストラングやボーバトンにはこの様な青年は見たことがない。
誰かに招待された人物だろうか？
「あ、あの、貴方は」
「俺か？ 俺はとある奴からホグワーツを調査しろと言われたから、ここにいる。ダンスパーティで浮き足立っている中、忍び込むには打って付けだからな」
「誰の紹介も無しに、無断で？」
そうだと青年は頷く。
「見て分かったが、この学校には碌な奴しかいない。
腹の見えない奴らばかりだ」
「そ、れは……まぁ、ある意味合っていると言いますか」
Aが言葉を濁しながら言うと、青年は黄色い目を細めた。
瞳には十字架を象った様な模様のある、不思議な目だった。
「しかし、お前とあのギルガメッシュは違う」
「え、ギルガメッシュを知っているんですか？」
「ここに来る前に会って、少しだけだが話した。
あいつもこの学校に関しては、良い印象を抱いていないらしい」
軽く風に乗って、ダンスパーティの音色や人々の歓声が聞こえてきた。
なんだかこの青年と話していると、その世界からすらも離れてしまった感覚に陥って来る。
「あ、そういえば、貴方の名前は？」
「教えん。俺はお前と成り合うつもりもないし、お前達の困難にも関わる気は無い。
それに、俺については名前でなくとも聞いたことはあるだろ？」
青年の言葉に彼女は考え込む。
果たして聞いたことは。
だがある情景が思い浮かび、とある人物が。
「あ、あの貴方、もしかして……あれ？」
考える為に下げていた顔を上げると、青年の姿はもうなかった。
いつの間にか姿を消していたのだ。
彼女はポツリと、その場にいない相手に呟く。
「貴方、アヴェンジャーよね。立香さんのサーヴァントである、シャーロックが一言だけど言っていたわ」
無論それに、青年が答えることはなかった。
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作者名：カフェラテ | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/shazam03271/
作成日時：2021年3月30日 12時
