その道の先へ－炎のゴブレット① (ページ19)

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争奪ページ19

「ねぇ君、僕と一緒に踊らない？」
「僕の事知らないかな？君が教科書を落とした時にさ！」
「俺、ずっと君を見てたんだ！良かったら」

授業の教室に向かう時や、食事を摂ろうと大広間へ行こうとした時に、Aは引っ切り無しに男子生徒から声を掛けられた。

理由は明白、ダンスパーティのパートナーとして、だ。

声を掛ける者の中には見知った相手もいたが、知らない人が殆ど。

勿論、寮も学年もバラバラだ。

「どうして私、そんなに」

「あら、自覚無いの？貴女、結構目を付けられてるのよ」

思わずポツリと呟くと、ハンナが言った。

これに彼女は首を傾げる。

「目を？」

「男子からは良い目でね。貴女に声を掛けたいのは山々だけど、常に誰かと一緒にいるから声を掛けられない。
だから」

成る程。ハンナの言わんとしている事が理解出来た。

つまり日頃Aに声を掛けられない男子生徒達が、ダンスパーティのパートナーとして誘うのを口実に、彼女に近付こうとしていると言う事だ。

それを聞きAは……。

「なんだか、怖い」

「そうならない為にも、早く相手を見繕いなさいよ。
多少はマシになると思うから」

ハンナが苦笑を浮かべて言った。

果たしてそれでマシになるのだろうか、とAは思わざるを得なかった。

Aが校庭に面した廊下を歩いていると、誰もいない校庭にてギルガメッシュの姿を見つけた。

あのハリーの騒動以来、会っていなかったので彼女は駆け寄ろうとしたが、慌ててその足を止める。

ギルガメッシュの前に、青い制服を着た女性がいたからだ。

確かボーバトンの生徒で、名前は。

「悪いが貴様とは踊れん」

「な、なーぜですか！私は」

「聞くところによると、貴様はあのセドリックとやらにも断られたそうではないか。
その後に我に申し込むとは、また随分自信があるんだな」

どうやらあのボーバトンの女性(名前は確かフラーだ)は、ギルガメッシュにダンスパーティのパートナーとして申し込んだ様だった。

セドリックに断られ、その後にギルガメッシュにダンスを申し込むとは……。

ギルガメッシュは不快そうにフラーを一瞥し、その場を去ろうと踵を返した時。

「あっ」

2人から左程離れていない位置にいる、Aと目が合った。