蜂蜜入りアールグレイの夢想曲 Ⅱ【twst】 (ページ4)

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直接カリムさんにお渡ししてしっかりと検品して頂きたい、とアズールは食い下がるが、もちろんジャミルがそれを許すはずもなかった。

今は、カリムを外部の人間に接触させるわけにはいかない。

そんな強固な意志の元、俺が預るからと彼はアズールの手から絨毯を毟り取ろうとするが、

「とにかく、絶対に直接会ってお渡ししたいのです。
　彼はもう起きていらっしゃいますよね？」

「だから、今日は都合が悪いと……
　あっ、勝手に入っていくな、アズール！」

ジャミルの静止もお構いなしに、彼は絨毯を抱えたままずんずんと寮の中に踏み込んでいく。

そのすぐ後ろに、邪魔すんぜ、とこれまた無遠慮にシノが続けば、

「あっ、ちょっと待ちなさいよ！」

「さ、Aさんとアンナさんも参りましょう。」

「遅れないで付いてきてねぇ？」

先行く二人の後をコニーが追い、未だ寮の玄関で二の足を踏んでいる Aとアンナを、双子が手招きした。

取り残された二人は、思わず顔を見合わせ、

「……こんな事に進んで関わるなんて、彼らは一体何を企んでいるのやら」

「味方になれば心強い、ってやつですかね……？」

*

悠々と肩で風を切りながら闊歩したアズールが向かった先は、スカラビアの談話室だった。

身支度を終え朝食が出されるのを待っていたカリムは、寮長会議でよく見知った顔が二つあることに気付き、

「あれ、アズールにコニー？何でウチの寮にいるんだ？」

「ご機嫌いかがですか、カリムさん。
　いやぁ、いつ来てもスカラビアは素晴らしい！」

ペルシャ絨毯の上で胡坐を掻くカリムを発見するなり、アズールは持ちうる語彙を駆使してこの常夏の寮を褒めちぎった。

その途中には、ここでリゾート開発をすれば莫大な利益が見込めるだろう、といった挨拶の域を逸脱した下世話な話まで。

「まーたアズール劇場の開演か？」

「開演ってよりかは怪演って感じだけどねぇ。」

ギャラリーたちの野次も気に留めず声高に語る彼に、うんうん、とカリムも満足気に頷く。

純粋な誉め言葉と嫌味とお世辞の区別が未だ付いていない彼は、褒めてくれてサンキューな！と太陽に負けず劣らず眩しい笑顔を見せたのだった。