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「悪い悪い、すっかり待たせちまったな」
「……。」
「へぇ、スイーツプレートなんて あるんですね。コニーさんはどうします?」
「……。」
友人たちの問いかけにも、コニーは一切 答えない。
不審に思ったシノは、おい、どうかしたのか?と彼女の顔を覗き込む。
そして、思わず ぎょっと その目を見張った。
コニーは、10年来の付き合いがあるシノですら、今まで見たことがないほどに蕩けた顔をしていた。
緋色の隻眼は恍惚の色を浮かべ、頬は だらしなく緩みきっている。
その うっとりとした表情に、シノは度肝を抜かれつつも、
「……おい、コニー?」
「…素敵……」
シノもアンナも、いよいよ言葉を失った。
この日、一人の少女が恋に落ちたのである。
*
大豪商の屋敷にたった一人の跡取り娘として生まれ、女子校であるTOCに中等部から在籍していたコニーにとって、それは紛れもない初恋だった。
恋は盲目、とは よく言ったもので、翌日から彼女の生活は一変した。
朝。既に自らの身支度を終え、アンナの拵える朝食を待つシノが、コニーの部屋の扉をノックした。
生粋の温室育ちである彼女は自分で髪を結うことができないため、シノが手伝ってやるのが日課なのだ。
……ところが、
「……おーい、入るぞ。ほら、さっさと支度しないと朝飯 食い損ねるぜ」
「ちょ、ちょっと待っててよ……!」
ドアを開けたシノは、何だこりゃ!? と桔梗色の双眸を見開いた。
コニーが大事にコレクションしている髪留め用のリボンが、部屋中に とっ散らかっているのだ。
シノが部屋に踏み入っても尚、コニーはリボンコレクションを あれでもない これでもないと引っ掻き回し、
「おい、朝から 何 散らかしてんだよ!?」
「ねえ、この刺繍入りのリボンと こっちのサテン地のリボン、どっちが似合う!?」
「どっちでも大して変わんねーっつーの! 別に いつもの赤いヤツで いいだろうが!」
「それは嫌なの!!」
突然 見栄えに こだわり始めたコニーに、シノは呆気に取られる。
元々 箱入り娘の彼女には、ほんの少しだけワガママな節があった。
だが こんな意地の張り方は、シノですら 10年近い 付き合いの中で一度も見たことがなかった。
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茨の國のぼっち(プロフ) - フォントから、ユニーク魔法から、文章から、全てにおいてセンスが良さすぎます!前章に引き続き、この章も楽しく読ませていただきました! (2021年1月17日 1時) (レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:擂糸 | 作成日時:2020年9月27日 12時