蒸留酒入りチョコレヰトの小夜曲【twst】 (ページ46)

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その日の放課後、鏡の間にて。

アズールから受け取った水中呼吸薬をそれぞれ手にした七人の少年少女は、闇の鏡の前に集(つど)っていた。

ふと、アンナは隣のシノをちらりと横目で見やり、

「シノさん。昨晩依頼した件、遂行できましたか？」

「……ああ、『学年代表補佐(ヴァイス・シスター)』の仰せの通りにな。」

昨晩依頼した件？と一年生たちは首を傾げる。

こちらの話ですからお気になさらず、とアンナが誤魔化せば、

「このアズールがくれた魔法薬、本当に水の中で呼吸ができるようになるのか？」

「疑ってても始まらねぇ。とりあえず飲んでみるしかねぇだろ。」

わざわざ敵に塩を送るような行いをそう簡単に信じてもいいものか、と彼らの脳裏に不安が過るが、契約期限まであまり時間は残されていない。

覚悟を決め、エースの合図で全員が小瓶の栓を抜き、ごくごくとその中身を呷る。

その直後、

「うげぇぇ～……」

干しガエルと腐ったキノコを混ぜたような不味さに、グリムは涙目になって舌を出し、コニーの料理の方がまだマシだ、とシノは渋い顔でぼやいた。

一方でそのコニーは、ここまで不味いものは口に入れたことすらないのか、薬を吐き出さないよう口を押さえながら目を白黒させている。

ふと、デュースが違和感を覚えた。

何だか、肺に空気を取り込む度に胸痛がするのだ。

肺が水中呼吸に順応し始めたことを悟った彼らは、居ても立ってもいられずに闇の鏡へ駆け出した。

「闇の鏡よ！俺たちを珊瑚の海へ導きたまえ！」

常闇を映す鏡面が水のように揺らぎ、色鮮やかな珊瑚の並木が連なる暖かい海へと繋がる。

彼らは鏡の枠を乗り越え、迷わずその中へと飛び込んだ。

*

──バシャンッ！！

そんな音と共に、無数の気泡が肌を撫ぜて浮き上がっていく。

薄く目を開ければ、そこは珊瑚の枝の隙間を小魚の群れが行き交う、穏やかな南海の中だった。