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026. ページ28

七寮のうち どれにも当てはまらない、象牙色の腕章。


それを袖に固定する金具が 模しているのは、上弦の月を留まり木に 羽を休める梟だ。


何より目を引くのは、裾に金糸の刺繍が入ったチャコールグレーのプリーツスカート。



『彼女たち』は、男子校であるはずのNRCにおいては異質とも呼べる、紛うことなき『女子生徒』だった。



「お、女の子……!?」


「……ああ、お前は知らないかもな。何でも、巷じゃ NRCを共学化する計画ってのが持ち上がってるらしい。

 そのために、今年は他校から『試験留学生』とやらを招いたんだと。」



まだ こちらの世界に落ちてきたばかりで この学園の内情に詳しくないであろうAに、ジャックは丁寧に説明する。


一匹狼を気取ってはいるものの、何だかんだで彼は優しいのだ。



……その直後、Aは妙な視線のようなものを、その肌で感じ取った。


まるで仇敵を睥睨するかのような、敵意に満ちた鋭い視線。


だが、幸いにも それは彼に向けられたものでは ないらしい。



皮膚が ぴりつくような尖った敵意の矛先には、つい先程 Aに契約を勧めた 双子のウツボがいた。


温良貞淑の教えの下に生きる三人の少女たちと、海のギャングの異名を取る双生の半海魔。


彼らは 一見すれば、互いに干渉し合わず、その領域を侵さないよう 距離を図っているかのように思える。


だが その肚の内では、両者とも牙を剥き合う 激しい威嚇の応酬が行われているのを、確かにAは知覚した。



Aが生まれ育った日本には、言葉を用いずに仕草や視線から 相手の心情を図り合う 特有の文化、或いは国民性のようなものがあった。


それは彼自身も例外ではなく、Aは俗に言う、高度な『察しスキル』のようなものを持ち合わせていた。



試験留学生たちとオクタヴィネル寮は、表面上こそ穏やかに見えるが、確実に敵対している。


Aは その察しの良さから、この空間で唯一 その事実に辿り着いた。


そして、悪役たちの集う この学園に通ううちに その校風のようなものに染まり始めていた彼は、一種のずる賢さも身に付けていた。



「……おい、腹でも痛いのか?」



試験留学生たちを見つめたまま微動だにしないAの顔を、ジャックが覗き込む。それには構わず、彼は ぽつりと呟いた。



「……あの人たちが、『鍵』かもしれない。」

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作品ジャンル:ラブコメ
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茨の國のぼっち(プロフ) - フォントから、ユニーク魔法から、文章から、全てにおいてセンスが良さすぎます!前章に引き続き、この章も楽しく読ませていただきました! (2021年1月17日 1時) (レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:擂糸 | 作成日時:2020年9月27日 12時

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