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014. ページ16

「浮かない顔ですね。何か お困り事でも?」


「いっ、いえ! べべ、別に そんなことは……」



自ら誤魔化して おきながら、つくづく自分は嘘を吐くのが下手だと コニーは痛感した。


あなたのことが好きなのに ちっとも振り向いてくれなくて困ってます、という本音は、パスタと一緒に飲み込む。



「そんなに思い詰めた顔をして、何でもない、なんてはず ないでしょう。

 ……他言できない お悩みなら、アズールに相談されては いかがです?」


「……アズールくんに?」



コニーは、皿の上でフォークを回していた手を止めた。


アズールとは同級であり、その名は彼女も よく知っている。


だが、何故 今 彼の名前が出てくるのだろう。



「僕らの寮長は、グレート・セブンの『海の魔女』のように慈悲深いですから。
 貴女のお悩みも、彼なら きっと解決してくださる はずですよ。」



対価さえ きちんと お支払い頂ければ、ね。


低く淀んだ声で呟いたジェイドに、コニーは びくりと肩を震わせた。



想いを寄せる張本人に勧められて 恋愛相談に行くというのも、おかしな話である。


それに、対価として 何を要求されるか 分かったものではない。



だが、少女は恋により盲目になっていた。


このまま 無為に恋情を抱えて 過ごすくらいなら、いっそ。



「……どうも ありがとう。検討、してみるわ」


「お力になれたのなら幸いです。貴女の幸運を、お祈りしていますよ……」



きゅっと唇を引き結んで俯いたコニーを、 ニヤリと鋭い歯列を覗かせながら ジェイドは見下ろす。


獲物を追い込んだ獰猛な肉食魚の瞳は、怪しくも美しい 二色の眼光を宿していた。



もちろん、彼の『親切』が純粋な善意からきている はずがなかった。


コニーとて、数多の『お客様』のうちの一人に過ぎないのだ。



……ああ、なんて可哀想な方なんでしょう。


その哀れみは、思い悩む彼女に向けたものか、それとも これから彼女が辿らされる であろう奇しき未来に向けたものか。


或いは、その両方なのか。



どちらにせよ、海の魔女が根城にする海底洞窟に 知らず知らずのうちに誘い込まれていたコニーには、もはや逃げ道など用意されていないのであった。

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作品ジャンル:ラブコメ
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茨の國のぼっち(プロフ) - フォントから、ユニーク魔法から、文章から、全てにおいてセンスが良さすぎます!前章に引き続き、この章も楽しく読ませていただきました! (2021年1月17日 1時) (レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:擂糸 | 作成日時:2020年9月27日 12時

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