012. ページ14
「これも食用にできるんです。貴女も ご存知でしたか?」
ジェイドに そう問われたコニーの隻眼は、鮮紅色の光を宿して 爛々と輝いている。
それは、ほとんど条件反射だった。
「ええ、もちろん! チャワンタケ目アミガサタケ科の食用キノコで、茨の谷ではモリーユという名前の高級食材として珍重されているんですよね。よく似た形状のシャグマアミガサタケは猛毒を持っているけど 実は別種で、アミガサタケ科のキノコは どれも無毒で食用可能なんですよ…ね……」
一週間で叩き込んだキノコの詳細情報が、彼女の口から すらすらと流れ出す。
ところが、ジェイドが 色違いの双眸を丸く見開いているのに気付き、解説は尻すぼみになった。
「…あの…… 何か間違えた、かしら……?」
コニーは、おずおずと彼の顔を見上げた。
ここまで得意げに語っておきながら、間違った情報が混ざっていたら 大恥である。
しかし、彼女の心配は杞憂だった。
ジェイドは徐ろに がしりとコニーの両手を捕まえ、
「……素晴らしいです! コニーさん、是非とも『山を愛する会』に入部してください。
貴女と一緒なら、山登りが もっともっと楽しくなると思うんです!! 」
と、同じように目を輝かせて熱弁したのだった。
意中の相手に 突然 手を握られ、捉え方によっては 口説き文句のように聞こえない こともない台詞で勧誘されたコニーの思考回路は、処理落ち寸前だった。
興奮が最高潮に達し、もはや茹で上がった顔を隠せなくなった彼女は、それを悟られないように俯きながら、呻き声のような返答をする。
「よ、よろ、こんで…お受け、します……」
「本当ですか!? 今後も是非 よろしくお願いいたします!」
コニーとは また別の意味で興奮したジェイドが、掴んだままの彼女の腕を ぶんぶんと上下に振る。
ついに耐えきれなくなった彼女が、あのっ、手……!と訴えると、
「! ……失礼しました。
今まで こうして一緒に山に登ってくださる方が 一人も いなかったもので、つい興奮してしまって……」
ようやくコニーの両手を離したジェイドが、照れながら弁解する。
身長190cmの男が 目を反らして頬を染める姿は 正に あざとさの極致であり、
(好き───!!)
再び心臓の ど真ん中を射抜かれたコニーは、己の胸の内で絶叫したのだった。
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茨の國のぼっち(プロフ) - フォントから、ユニーク魔法から、文章から、全てにおいてセンスが良さすぎます!前章に引き続き、この章も楽しく読ませていただきました! (2021年1月17日 1時) (レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:擂糸 | 作成日時:2020年9月27日 12時