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「毎度あり、小鬼ちゃん! ……そうだ、君に渡してほしいものがあるって、コレを預けられたんだ。」
そう言ってサムがフロイドに差し出したのも、やはりレモンキャンディである。
「……ねえウミウマくん、コレ誰から預かったの?」
「残念だけど、それは教えてあげられないなあ。秘密にしてほしい、って本人からのお達しなんだ」
随分と情熱的なお友達だね、と笑うサムを他所に、フロイドはつまらなさそうにキャンディをポケットに押し込んだ。
そこは、今日一日だけで彼が拾ったレモンキャンディでパンパンに膨らんでいる。だが、まだまだキャンディの追撃は止まらない。
フロイドが魔法史の授業で うとうとと舟を漕いでいると、後ろの席から何かが放られて彼の後頭部に命中したのだ。
僅かな痛みに飛び起きた彼が目を見張れば、そこには またもやレモンキャンディ。
一体誰だと後ろを振り返って犯人捜しを試みるが、リーチ、前を向けとトレインに窘められたせいで叶わなかった。
しかし、苛立ちを募らせる彼の前に、犯人は間もなく その正体を自ら現した。
休み時間に入り、フロイドの目の前で机の上にザラザラと袋いっぱいのレモンキャンディをぶち撒けたのは、他でもないシノだった。
「……は?」
「どうだ。なかなかイヤーな気分になっただろ?」
彼女は勝ち誇ったように笑っているが、フロイドは いまいち状況が掴めない。
確かに授業中まで投げ付けられたのは鬱陶しかったが、何故にレモンキャンディ。
「だってお前、レモン味キライなんだろ? どうだ、一日中嫌いなものを投げ続けられた気分は」
オレって いつの間にレモン味嫌いになったんだっけ?
……いや、確かにしいたけは嫌いだけど レモンを嫌いになった覚えはない。
だったら、コイツは一体何を根拠に?
そこまで考えてから、フロイドは昨日のシトロナード事件のことを思い出した。
あの時、自分は『間違って嫌いな味を買った』と嘯いて彼女に炭酸爆弾を渡したのだ、と。
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茨の國のぼっち(プロフ) - いいお話すぎます!シノが風邪ひいた時のお話、フロイド君が健気すぎて泣きました!控えめに言って最高です。もっと伸びろ〜! (2021年1月17日 0時) (レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:擂糸 | 作成日時:2020年8月18日 11時