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ずしりと重たい瓶の入った紙袋を片手に、シノは やっとの思いでコロシアムまで戻ってきた。
フィールドではトーナメントを勝ち進んだ寮同士の試合が行われている真っ最中だが、そこにオクタヴィネル代表の姿はない。
今 何試合目だ？ フロイドはどこに いるんだ？
開会式すら すっぽかしてしまったシノに そんなことが判るはずもなく、彼女は大人しくオクタヴィネル生の待機する応援席へ向かった。
その辺りを歩いていた寮生を適当に捕まえ、
「なあ、
フロイドに会わせてほしいんだけど……」
「ああ、確か その辺で しょぼくれてるよ。おーい、フロイド〜！」
蹲っていたフロイドは、寮友の呼び声に「……何？」と鬱陶しそうに顔を上げた。
「女の子がお前のこと お呼びだぞー！」
「……うざ。適当に断っといて。」
「いいのか？ 例の『シャコちゃん』だぞ？」
それを聞いた瞬間、彼は がばりと勢いよく体を起こした。
何で、シャコちゃんが。オレの出てる試合 見に来てくれなかったのに。
とにもかくにも立ち上がり、呼ばれた方へ駆け出すフロイドを、他の寮生たちがヒューヒューと冷やかす。
「よっ、顔面国宝ウツボ！」
「リア充爆発しろ！」
「うっせぇ！！ お前ら後で ぜってー絞めっから覚えとけよ！！」
*
シノは、客席への入場口でフロイドを待っていた。
そして 呼び付けられて すっ飛んできた彼を見つけ、珍しく控えめに手を振る。
「……シャコちゃんさ、どうして来たの」
「約束、しただろ」
約束？と首を捻るフロイドに、彼女は紙袋に入れた瓶を ずい、と差し出した。
透明なガラスの内側で、蜂蜜に浸かったレモンが ゆらりと動く。
「……何これ」
「ご所望の蜂蜜レモンだよ」
この時、彼は ようやく思い出した。
10月の始めに、シノと そんな約束をしたことを。
だが、こちらは 文字通り彼女に牙を剥いた身だ。
いくら約束と言えど、破られたって仕方がないはずなのに。
はぁー……とフロイドは 深く深くため息を付いた。
やっぱりシャコちゃんって、馬鹿正直 過ぎるよねぇ。
目の前のシノにも聞こえない程 小さな声で、彼は そっと呟いた。
「……そういうところが、好きなんだけどさ」
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茨の國のぼっち(プロフ) - いいお話すぎます！シノが風邪ひいた時のお話、フロイド君が健気すぎて泣きました！控えめに言って最高です。もっと伸びろ〜！ (2021年1月17日 0時) (
レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：擂糸 | 作成日時：2020年8月18日 11時
