炭酸入りシトロナードの狂詩曲【twst】 (ページ31)

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ボールをドリブルする音とシューズが床に擦れる甲高い音が響く、放課後の体育館。

フロイドはゲームにも練習にも参加することなく、ベンチに座ったままぼんやりと虚空を見上げていた。

またフロイドのスイッチが切れてる、と他のバスケ部員たちは彼を相手にしなかったが、それを見かねたエースは、

「あの、フロイド先輩。今から俺たちミニゲームやるんすけど、先輩も参加しません？」

「……今それどころじゃないんだよねぇ。」

何もせずぼんやり座っているだけなのに、それどころじゃないも何もあったものか。

自由奔放を絵に描いたようなフロイドの返答に、彼は二の句が継げなかった。

「やめておけ、エース。フロイドの機嫌を損ねたら後が面倒なだけだぞ。」

ミニゲームなら俺が参加しようか？と、休憩がてらボールを磨いていたジャミルが顔を上げる。

物事を穏便に運ばせるプロがそう言っているのだから、エースもそれに従うのが吉なのは目に見えている。

しかし彼は、

「いやー、フロイド先輩が悩み事なんて珍しいっすね。
　もしかして恋煩い？ ……なんちゃって」

やはり、少年とはハチの巣を見たら石を投げずにいられない生き物なのである。

どうせ神妙な顔してる割に大したことなど考えちゃいないさ、とジャミルは肩を竦めてみせたが、

「……うん。オレ、好きな人できちゃった。」

「「……は？」」

二人揃って間抜けた声を出す傍らで、誰かが放ったシュートがゴールをくぐって床に弾んだ。

*

「ち、因みにお相手は……？」

「シャコちゃん」

「……誰すかそれ」

「フロイドと同じ2Dの生徒だな。ほら、試験留学生の一番小さい奴だ」

それを聞いて、ああ、とエースも合点する。

編入早々、フロイドを天球儀で殴った猛者だとも。