炭酸入りシトロナードの狂詩曲【twst】 (ページ29)

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ダンッ！と鉄製の扉を蹴って開ける。

そのままプールサイドに飛び出したシノは、

「ほら、水だ！しっかりしろ……ってわあぁっ！！?」

太陽の光を反射して輝く水面にフロイドを投げ込むが、その重さのせいでバランスを崩して、シノ自らも落水してしまった。

制服を着たまままっ逆さまになって沈む彼女の体を、人魚の尾ヒレが優しく絡め取って水面へと導く。

げほごほと水を吐き出しながら、大丈夫か……！？と問うその体を、フロイドは幾重にも尾ヒレを絡ませたまま抱き寄せた。

濡れたワイシャツ越しにぴたりと肌が密着する感触には、さしものシノもドギマギせざるを得ないのか、両腕で彼を突き放しながら、

「と、とりあえず無事でよかったよ。
　あたしはクルーウェルにでも事情を話して変身解除薬工面してもらうからさ、」

そう言ってプールサイドに這い上がろうとするのを、フロイドは尾ヒレを強く巻き付けて引き留める。

「……別にいいよ」

「でも、」

「いいってば」

……行かないで。

駄々を捏ねる子供のような声を出す彼に絆され、シノはプールから上がるのを諦めた。

「……オレ、シャコちゃんに謝んなきゃ」

「何だよ、急に。別にここまで運ぶくらいどうってことないぜ？」

「そうじゃなくてさ、」

それまで頑なにシノの肩に顔を埋めていたフロイドが正面を向き、二人の視線がばちりとぶつかる。

彼女の顔を映す蜂蜜と橄欖の色をした瞳は、いつもと違い弱々しい光を宿している。

らしくもない表情をする彼が抱える秘密など知る由もないシノは、やっぱり綺麗な顔してるなぁコイツ、などと考えていた。

「…これが、オレの本当の姿なんだ」

隠しててごめんね。オレのこと嫌いになったかな。

消え入りそうな声音で、ぽつりぽつりとフロイドが呟く。

日没に間に合わず、船上でその正体を暴かれてしまった人魚姫もこんな気持ちだったのだろうか、と彼は噛み締めていた。