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015. ページ17

ばりっ、と過ぎた月のページを破り捨てれば、10月のカレンダーが顔を出した。


たった今 切り離し、くしゃくしゃに丸めた9月のページを、シノはゴミ箱目掛けて 振りかぶって投げる。



……が、無駄に鮮やかな投球フォームとは裏腹に、彼女が放り投げた紙くずは ぽこっ、とゴミ箱の縁に当たり床に転がった。



長い腕を存分に活用して黒板上の板書を消していたフロイドは、その様子を見て けらけらと笑い出した。


彼らは今日の日直当番である。



「思いっきり外してんじゃん、ダッセー。」


「わ、笑うなよ!」



赤面しながらも律儀に紙くずを拾い上げてゴミ箱に捨て直したシノを他所に、にしても もう10月かぁ、と彼は呟いた。



今月の目玉行事といえば、もちろん寮対抗マジカルシフト大会である。


といっても、仮編入中のシノたち試験留学生には 当然 出場権が与えられていないため、ギャラリーから観戦することしかできないが。



「ま、あのナイトレイブンカレッジのトーナメントをタダで見られるだけ儲けものだけどさ。
 お前も出場するんだろ、フロイド?」


「まだ選抜メンバー候補だけどね。シャコちゃんは観客席でオレのこと応援しててよ。」



すっげぇ スーパープレー見せたげるよ、と含み笑いでフロイドは言った。


何とも思わせぶりな その台詞には、年頃の少女なら誰しもが彼に期待を寄せてしまうだろう。



だが、言葉の裏に込められた真意というものを汲み取れる程、シノは他人の機微に聡くなかった。



「おう! そうだ、アレ持ってってやるよ、えーっと……レモンの醤油漬け?」


「どんな味すんだよ、それ」


「あれ、違うか? 酢漬けだったか?」


「どんだけ酸っぱくすれば気が済むの?」



戯れに彼女をからかってやる つもりが、健気な返答と天然ボケの数々を返されたフロイドは逆に赤面せざるを得ず、



「……頼むからレモンは蜂蜜で漬けてよ」



と そっぽを向きながら答えたのだった。

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作品ジャンル:ラブコメ
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茨の國のぼっち(プロフ) - いいお話すぎます!シノが風邪ひいた時のお話、フロイド君が健気すぎて泣きました!控えめに言って最高です。もっと伸びろ〜! (2021年1月17日 0時) (レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:擂糸 | 作成日時:2020年8月18日 11時

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