炭酸入りシトロナードの狂詩曲【twst】 (ページ15)

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「……えっ！！？」

遅れて違和感に気付き、シノはキッ！と足にブレーキをかける。

今、あたしは誰とすれ違ったんだ……！？とばかりに、背後を振り返った。

彼女とすれ違った人影も、同じく白昼堂々屋根の上を疾走する存在に気付いてこちらを向いた。

そして、ほぼ同時に、

「…フロイド！？」

「…シャコちゃん！？」

それは、ボーイミーツガールと呼ぶには些か珍妙だった。

*

「シャコちゃんここで何やってんの！？」

ここ屋根の上だよ！？と自分のことを棚上げして、フロイドはストレートに疑問をぶつけた。

一連のシトロナード事件から既に一週間あまりが経過しているが、当時あれほどまでに険悪だったフロイドとシノの仲は、現在至って良好だった。

出会いが出合いだった故に、二人の間には誤解が炸裂しまくっていたが、打ち解けてみれば『気の置けない友人』と呼べる程度には距離が縮まっていた。

彼らは現在、2-Dの凸凹コンビとして教師陣の頭痛の種になっている。

「……コニーが4階から降りられなくなったって言うから」

「コニー？ ……ああ、アロワナちゃんのことかあ。」

フロイド曰く、『キラキラしてて金持ってそう』なところがアロワナそっくりらしい。

直接の面識はなくシノの話から連想したに過ぎないが、実際コニーは裕福な家庭で育った所謂『お嬢様』なのだから、彼の洞察力は意外に侮れない。

「で、アロワナちゃん助けにいくために近道してたの？」

「まあそんなとこだな。……そう言うお前は？」

「オレ？オレはパルクールの練習～。」

6限出てないと思いきやそういうことか、とシノは独り言ちた。

同時に、初接触の際に起こった三次元鬼ごっこで彼をまんまと取り逃がしたことも思い出す。

あの時の挙動も、確か。

「パルクール……って、確か飛んだり跳ねたりしながら走り回る運動だったか？」

「そーそー。自分の足であっちこっち跳び回るのって結構楽しーよ。」

こんな風に、とフロイドは少し離れた屋根の縁へ、体に捻りを加えながら軽々と飛び移った。

うず、とシノの中で何かが疼く。

それは好奇心か、はたまた2本の足を我が物にする彼への憧れか。

そして次の瞬間、彼女は足元の洋瓦を蹴ってしなやかに跳躍してみせたのだった。