012. ページ14
6限の終わりを告げるチャイムが、校舎に鳴り響く。
んー、と大きく背を反らして伸びをしたシノのポケットの中で、スマホが震えた。
ごそごそとスカートに手を突っ込んで、彼女はスマホを探り出す。
待ち受けには、たった今コニーから届いたメッセージが表示されていた。
《助けて》、と。
「……は？」
突然の救援要請に、シノは首を傾げた。
すぐにメッセージアプリを立ち上げ、返信を打ち込んでいく。
すぐに既読マークがつき、さらなるメッセージも届いた。
《急にどうした？》
《降りられなくなったの》
ますます意味がわからない。
一体どこから降りられなくなったというのか。
《今どこにいんの？》
《東校舎の4階の屋根の上》
《何故に……？》
《箒が》
《暴走したの》
ここまで遣り取りを続けて、シノはようやく合点がいった。
コニーは昔から、壊滅的な程に箒と反りが合わなかった。
おおかた、へそを曲げて言うことを聞かない箒の柄を 引っぱたきでもしたのだろう。
怒って暴発する箒に振り回されるコニーを、シノは何度か見たことがある。
すぐ行く、と返信し、シノは自らの席を立った。
屋根の上ということは、校舎の内側からでは辿り着けないだろう。
適当な空き教室に入り、ガラッと窓を開ける。
そのまま窓枠から身を乗り出すと、なんと彼女は配管や表面の凹凸を伝って、校舎の壁をよじ登り始めたのだ。
普通なら目が眩んでも おかしくないような高さを気にもせず、シノはあっという間に するすると屋根の上に登ってしまった。
現在地は西校舎寄りだから、コニーが孤立している場所までは まだ距離がある。
そう確認するや否や、彼女は颯爽と屋根の上を駆け出した。
狭く不安定な足場を軽快に走り抜け、時折 段差を飛び越えたり 屋根から屋根へ飛び移ったり。
ふと、進行方向から向かってきた相手と肩がぶつかりそうになり、
「おっと、悪い！ 急いでるんだ！」
器用に体を反らして すれ違い、一瞬 緩んだ足を再び速め……るには至らなかった。
これが廊下なら、彼女は気にせず走り続けたのだろうが。
ここは『屋根の上』であり、間違っても『誰かとすれ違う』なんてことは あり得ないのである。
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茨の國のぼっち(プロフ) - いいお話すぎます！シノが風邪ひいた時のお話、フロイド君が健気すぎて泣きました！控えめに言って最高です。もっと伸びろ〜！ (2021年1月17日 0時) (
レス) id: 9a68fed22a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：擂糸 | 作成日時：2020年8月18日 11時
