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気が済むまで泣いて漸く落ち着いた頃に、俺達は見つかった。何事も無かったかのように外に出て、それぞれの友人の元に向かう。
辻本に目が赤いと揶揄われたが、適当に誤魔化した。
夕食はクラスの班でカレーを作るため意気揚々と包丁を手に取るも、ロボロに必死で止められた。何やねん、カレーくらい作れるわ。米を洗おうとしても止められ、結局手持ち無沙汰のまま女子が主力となって作ったカレーを食べた。
腹を満たして風呂も入り、残すイベントは肝試しのみ。……とはいえ、非参加の俺は退屈な時間になる。肝試しに参加する生徒が大半なのか、建物内は昨日より森閑としていた。
ロボロも辻本達に引き摺られて行ってしまったし、さて何をして暇潰ししようか、と考えた時に思い浮かんだこと。
あぁ、そういえば。
手馴れた手つきでトーク一覧からAの名前を探し出し、電話をかける。
『……もしもし?』
「よ、今暇?」
『暇だけど……何する気?』
俺が何かする気であることを直ぐに察知するあたり、昔一緒に悪戯しとった悪友って感じやな、と頬が緩む。
「肝試しと反対側の出口、来て」
数分後、ジャージでは無くプルオーバーのパーカーを着たAが現れた。未だに俺の行動を理解していないAの手を引いて、肝試しをしている集団と反対側に走り出す。
昼間入った倉庫の更に奥、フェンスに開いている大きな穴を潜り、どんどん奥に向かっていく。
『ちょ、ちょっと怒られるよ!?ここ行っちゃいけないんじゃないの?』
「バレなかったらええねんて。ほら、頭気ぃ付けや」
『よっ、と……ほんっとそういうとこ昔から変わらないね』
「ええやろ、昔に戻ったみたいで」
小さい頃も大人から言われていた入ってはいけない場所に忍び込んだり、秘密基地開拓や探検と称して様々な場所を不法侵入、もとい潜入捜査をしたものだ。
森の奥に進んでいき、高台に上がっていく。
『……目的地、あるの?』
「あるで。────ほら、」
『……わ、』
眼前に広がるのは、視界に収まりきらない程の星空。何処と無く星座に見えるものから、名前も知らない星々がきらきらちかちかと瞬いている。
「パンフレットに天体観測の名所って書いてあったの思い出してん。肝試しよりずっとええやろ?」
『……こんなの、初めて見た……』
瞬く星に負けじときらきらと輝かせながら目を大きく見開いて空を見上げるAは、まるで子どものように感嘆の声を上げた。
星が降るような、綺麗な春の夜だった。
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悠亜(プロフ) - すずらんさん» コメントありがとうございます!有難いお言葉光栄です……あまり派手な話ではないですがこの後もいろいろと2人の心境に変化が現れますのでそちらも是非見て頂けたら嬉しいです!ありがとうございます! (2020年2月28日 9時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 何から言ったら良いのかわからなくて乱文になってしまうのですがコメント失礼します。好きです。心理描写がとても繊細で手に取るように分かりやすくて好きです。応援させてください… (2020年2月27日 9時) (レス) id: 14859b81d2 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - ユヅルさん» 前作からありがとうございます!前作との差分化を図るのが難しいですが、こちらもこちらで楽しんで頂けると幸いです!ありがとうございます! (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - さいさん» コメントありがとうございます!中々微妙な距離感ですが、どう近付いていくんですかね。私にも分かりません。嬉しいお言葉をたくさんありがとうございます!気長にお待ちください! (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
ユヅル(プロフ) - わああああ!!前の作品も見させていただいてました…!!!相変わらずの文才…ほんとに尊敬します…!!更新頑張ってください!! (2020年1月19日 18時) (レス) id: 0f65930547 (このIDを非表示/違反報告)
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