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-シャオロンside-
再び腕の中にすっぽり収まるAの口元に手を当てると、中指にぷるりとした唇が触れた。……落ち着け、この距離はさすがに心拍が伝わる。
背後で俺達を探す足音や物音に耳を向け、出来る限り息を潜める。隠れんぼに勝つことより、咄嗟に引き寄せた自分が悪いがこの状況を誰かに見られる方が不味い。
石のように固まるAをちらりと見ると、表情は見えないが耳が真っ赤に染まっているのが見えた。悪戯に耳元で指摘するとAの小さな指が俺の太腿を抓った。口元を押さえた手でそのままむにむにと頬で遊ぶと小さく頭を振る。なんやこいつおもろい。弄りがいあるわ。
長時間にも思えた鬼役のガバ探索は終わり、外に出ていく気配を察知する。危なかった、後顧の憂いは去った。
(『……だから、ここにもいつまで居れるか分からない』)
ふと、公園で煢然な眼差しでぽつりと呟いたAの姿を思い出した。また、離れ離れになるのかもしれない。そう考えたら、今腕の中に居るAが愛おしく感じた。腰に手を回して頭を埋める。あ、あかん、ちょっと泣きそう。
弦楽器の弦が震えるような、鈴が鳴った後の蕩揺のような声で「仕方ない」を何度も紡ぐAの涙が俺の腕に落ちる。
『……私だって、離れたくなんて無かったよ。シャオちゃんと、ずっと一緒に居たかったよ』
多分、俺が1番聞きたかったのはそれやったのかもしれない。
Aの意志で、俺と一緒に居たくなくて遠くに行ってしまったのかとどこかで思っていた。1番怯えていたことが否定されて、何とか堪えていたものが一気に溢れてきた。
もう、嫌やねん。お前が居らん生活に慣れるのが。いつの間にか居らんことが当たり前になって、何をするにも最優先にお前の名前が上がらへんのが。
思い出すために忘れてしまうのが嫌や。忘れたくない、離れたくない。こんな小さかったっけ、こんな脆かったっけな。
あの時は手遅れやった"行かないで"が、今度は言える。それでもやっぱり手離したくない。この温もりが惜しい。
変わっててもいい。変わっていなくてもいい。ただ近くに、出来るなら俺の隣にいて欲しい。
「……行くなよ、A」
『……離れるまでは、一緒に居たいね』
約束が出来ない俺達は、いつかのさよならの日まで、ただただ縋る事しか出来ない。
このまま、逃避行でも出来たらええのに。
連れ去ってしまえば、もう離れないのに。
Aを見つける隠れんぼの鬼役は、いつだって俺やったのに。
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悠亜(プロフ) - すずらんさん» コメントありがとうございます！有難いお言葉光栄です……あまり派手な話ではないですがこの後もいろいろと2人の心境に変化が現れますのでそちらも是非見て頂けたら嬉しいです！ありがとうございます！ (2020年2月28日 9時) (
レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
すずらん(プロフ) - 何から言ったら良いのかわからなくて乱文になってしまうのですがコメント失礼します。好きです。心理描写がとても繊細で手に取るように分かりやすくて好きです。応援させてください… (2020年2月27日 9時) (レス) id: 14859b81d2 (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - ユヅルさん» 前作からありがとうございます！前作との差分化を図るのが難しいですが、こちらもこちらで楽しんで頂けると幸いです！ありがとうございます！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
悠亜(プロフ) - さいさん» コメントありがとうございます！中々微妙な距離感ですが、どう近付いていくんですかね。私にも分かりません。嬉しいお言葉をたくさんありがとうございます！気長にお待ちください！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: eb2dbc11ad (このIDを非表示/違反報告)
ユヅル(プロフ) - わああああ！！前の作品も見させていただいてました…！！！相変わらずの文才…ほんとに尊敬します…！！更新頑張ってください！！ (2020年1月19日 18時) (レス) id: 0f65930547 (このIDを非表示/違反報告)
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