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「なっ、‥どした!?」

「もおっ!なんも言わずに抱きしめられてて!」


くやしい。
くやしい。
翔ちゃんに素直に甘えてもらえないことがくやしい。
おれじゃあ、甘えるくらい頼りにされてないって思うことがくやしい。


「‥まさき?‥やっぱなんかあった?」
「‥‥なんで」


様子のおかしいおれに、翔ちゃんが背中を撫でながらそう聞いた。
翔ちゃんの髪の毛はおれがかき混ぜたせいでぐちゃぐちゃで、それでも髪の毛を直すより先にまずはおれを覗き込んで様子を伺う。


「大事なメンバーのことだもん、見たらわかるよ。」


澄み切ったまっすぐな目でそう言う翔ちゃん。
‥抱きしめる腕に、力を込めた。





「おんなじだよ‥‥‥。」
「‥え?」
「おれだって、わかる。大事なメンバーのことだもん。翔ちゃんがなんかに傷ついてること、わかるよ!」


お願い、この気持ちわかってくれるよね?



「翔ちゃん、なんかあった?」


もう一度、さっきは拒絶された問いかけを、翔ちゃんへ。

まっすぐな瞳が揺らぐ。
さっきは「なんもないよ。」って笑った顔が、強張った。


もう一息、だ。


「翔ちゃん、‥ねえ、翔ちゃん。頼りないかもしんないけど、‥翔ちゃんが1人で我慢してるのはもういやだ。‥話してほしいよ。」


卑怯なのはわかってるけど、こうしておれが自分を下げれば、下手に出て『お願い』をしたら、十中八九、翔ちゃんはオチる。
こんなこと言わなくたって頼ってほしいけど、今のおれじゃムリみたいだから、なんにだって縋ってやる。

案の定、悲しい顔した翔ちゃんは、「ごめん」と小さく謝った。

自分がそう仕向けたくせに、翔ちゃんを謝らせて気を病ませた自分に腹がたつ。
もっと上手くやれればどんなにいいか。


「雅紀のこと頼りにしてないわけじゃないんだよ、ただ、自分が情けないだけで‥。」
「翔ちゃんのこと、情けないなんて思わない!」


突っかかるみたいに言ったおれを、解けるように翔ちゃんは笑う。



「‥うん、知ってる。雅紀のそう言うとこ、知ってるからこそ言えなかった。全部を肯定してくれる雅紀に、許してもらうだけじゃ自分が許せなかった。
雅紀に甘えて、逃げたくなかった。‥お前のこと、頼ってないわけじゃないよ、‥‥雅紀のそばに居ると、ホッとして、安心して、緩んじゃうんだよ?‥笑顔をくれる雅紀の前で、つらい話を思い出したくなかった‥‥っていうのじゃ、許してくれない?」

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作者名:とことこ | 作成日時:2017年7月28日 14時

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