☆ 3 ページ14
机の上に並べた薬の中から翔くんが選んだ錠剤をぽいぽいと口に入れて一気に飲み込む。
喉に当たったやつたちが痛かったけど、がまん。大したことない。
「病院行く?」
車出そうか?と聞かれたけど、ただの風邪なのにそんなことしなくてもいい、と答えたら翔くんがすこししょげた。
「智くん、もっと自分大事にしてよ」って眉を下げる顔が、かわいい。思ったままにそう言ったら、スンっと冷たい顔になっちゃったからもう言わないようにしよう。
「じゃあ今日はゆっくり寝てなよ。」
そう言われたから、ソファの上に登ってまるまってみる。そよそよとクーラーの風が当たってきもちいい‥‥と目を閉じようとしたら、
「ここじゃダメだよ、部屋行こう。」
とやさしい声。
「クーラー当たっちゃうし、体も伸ばせないし、ね。」
翔くんが必死なのはわかる。
だって顔がおれを連れて行く気満々だから。
でも、今更動くのも面倒で翔くんから目を背けた。
「だいじょーぶ、ここでいい。」
「じゃあせめてマスクつけて‥」
「えーやだあつい。」
「タオルケット掛けて‥」
「だからあついって。」
翔くんがおれのために言ってくれてるのは分かってる。分かってるけどそんなことしなくたって大丈夫なのに。
そう思うからそのままソファに横になり続けてたら、
「‥智くんのこと蔑ろにするのは、智くんでも許さないよ。」
と、なんだか難しいんだかかっこいいんだかよくわからない言葉を言った翔くんが、力任せにおれを抱き上げた。
脇の下に手を入れて、ぐっと持ち上げたかと思えば、俵を抱えるみたいに肩に担がれる。
「ちょっ、翔くん!?」
「言うこと聞かないなら無理やり聞かすよ。ここじゃダメです、部屋に行きます。」
「おろしてって‥‥げほっ、」
「あんまり騒いだら咳でるよ、ちょっとの間力抜いてて。運びづらいから。」
案外頑固な翔くんだ。
こうなったらもう仕方ないんだろう。
自分の部屋に連れていかれて、ベットに降ろされた。クーラーはこちらに当たらないようにファンを上に向けられて、マスクをしっかりつけさせられて、トントン胸を撫でてくれるっていうサービス付きだ。
「明日になっても治んないから病院連れてくからね。」
「‥やだ。」
「じゃあ今日は釣り動画見るのも禁止だからね。」
「ふぁい」
ふふ、と笑う翔くんはお母さんみたいな目をしてた。
結局その日1日、甲斐甲斐しく世話焼いてくれた翔くんのおかげで、次の日には全快でした。
155人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:とことこ | 作成日時:2017年7月28日 14時