相反 ページ6
※この作品の世界は、今、私たちの生きる世界とは別のものであるということを念頭にお読み下さい。
.
この世界には、二つの人種がある。
正義に生きる人間と、罪に生きる人間。
この世に生まれ落ちる直前、神にどちらの人間として誕生するのか、言い渡される。
「お主は、正義の人間じゃ。」
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私が生まれて、もう20年が経とうとしている。
私は"正義の人間"としての生を全うするため、警察官になった。
正直、人に痛みを与えるのはちょっと嫌だ。
自ら好んで、発砲するような人間はいないだろう。
──
警察官になれたものの、まだ新人の私はパトロールをすることが多い。
先輩方は、お年寄りの話に付き合うのが面倒いから、と言ってパトロールしたがらないが、私は嫌ではない。
私も、この世界の秩序を維持するために貢献できている。
そう思えるから、パトロールは嫌いではない。
いつも通り、路地裏に入る。
ここには、罪に生きる人間がうじゃうじゃ居る。
放り出された空の缶ビールに、若干中身の残った菓子袋。
気持ち悪い程混ざり合った酒と生ゴミの臭いは未だに慣れず、顔を顰めてしまう。
白髪にてっぺんの禿げた50代くらいのおっさんが嘔吐する所を目にしてしまい、私も吐きそうになる。
吐き気に耐えながら歩いていると、何処からか銃声が聞こえた。
愈々、私の出番のようだ。
少しだけ心を踊らせながら、現場へ向かった。
現場に近づくにつれて、鉄の臭いが濃くなっていく。
どうやら、人に発砲したようだ。
それと同時に、誰かの叫び声が聞こえる。
「お前なんか！ﾊﾞﾝ…お前なんか居なければ……お前なんか！！！ﾊﾞﾝﾊﾞﾝﾊﾞﾝﾊﾞﾝ」
「ちょっと、やめなさい！」
「うるせぇ！
その言葉に、私は何も返せなかった。
"正義の人間"として生まれた私は、正義が絶対であると信じて生きてきた。
『最後は必ず正義が勝つ』と、何処かで聞いたことがある。
罪は制裁しなければならない。
そう信じてやまなかった。
ふと我に返ると、ｶﾁｶﾁ、と弾の切れた音が聞こえた。
弾切れの銃を捨てた男は、顔を上げて此方を見る。
「お前……、泣いてるのか？」
「…え、」
続
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作者名：名奈 | 作成日時：2021年1月18日 17時
