枯葉 ページ4
※死ネタ注意
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秋。
それは、俺の一番嫌いな季節だ。
体調管理が難しいし、花粉が飛ぶから嫌いだ。
赤や黄に色づいた景色を見るのが嫌いだ。
そして何より、それらが朽ちていく姿を見るのが嫌いだ。
冷たい風が頬を掠める。
10月6日。季節は秋。
俺は、23回目の誕生日を迎えた。
この日は、決まってすることがある。
それは、一日中、近くの公園で過ごすこと。
寒さに耐えようと厚着した子供たち。
仲睦まじく散歩する老夫婦。
最近の流行りがあーだこーだと話すJK。
全て、あの日とは違う。
それでも、10月6日は、俺が忘れてはいけない日なのだ。
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それは、18回目の誕生日のことだった。
「お誕生日おめでとう!」
当時付き合っていた彼女と、この公園に来た。
どんなに寒くても、彼女と居たら、寒さなんてどうでもよかった。
彩やかに紅葉した木々が、俺の誕生を祝福してくれているように思った。
「誕生日プレゼントあげるから目瞑って!」
「え〜どうしても?」
「どうしても!」
言われるまま、俺は目を閉じた。
「──────ッ」
ほんの数秒、触れるだけのキス。
目を開けると、頬を紅葉のように朱く染める彼女がいた。
「えへへ、お誕生日おめでとう。」
「これが私からの、最後のプレゼントだよ。」
俺は、その言葉の意味が理解できなかった。
翌日、彼女は学校に来なかった。
次の日も、その次の日も、更にその次の日も。
──おかしい、何かがおかしい。
俺の中で警鐘が鳴っていた。
彼女に連絡しようとしたが、彼女の連絡先が消えていた。
幸い、彼女の家を知っていたため向かった。
チャイムを鳴らすと、彼女のお母さんが出てきた。
「あの、Aいますか。」
「…あの子、何も言わなかったのね。」
「…それ、どういう意味ですか。」
「………10月6日、Aは他界したのよ。」
──嘘だ、そんなの嘘だ。嘘に決まっている。
「……嘘ですよね?その日、俺とあんなに楽しそうに、」
Aのお母さんは黙っていた。
その刹那、この世界から色が消えたような気がした。
続
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作者名:名奈 | 作成日時:2021年1月18日 17時