妄想最盛期 (ページ12)

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恋以上恋人未満ページ12

彼女とは毎年、夏に花火を見に行く。
"彼女"と言っても、ただの幼馴染だが。

しかし、そう思っているのはきっと彼女の方だ。
なぜなら、俺は彼女が好きだから。

これは、ある夏の日、俺の恋心が溢れた日の話である。

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20XX年8月某日。
今日は花火大会が行われる。

屋台が並んだ夏祭りの会場にある広場から眺める花火も綺麗だが、静かに揺れる波の音と光を反射する水面の元、海で眺める花火は絶景だ。

Aには、今年で付き合って2年になる彼氏がいるが、其奴はAと俺の付き合いを知ってか、俺との花火大会を優先してくれるらしい。聞き分けのいい彼氏さんで大変助かる。

──俺がAを奪おうとしていることも知らずに。

待ち合わせ場所に車を走らせる。
到着したら、浴衣を着たAが待っていた。
彼氏のいるAが、ただの幼馴染である俺の前に浴衣姿で現れるとは、一体どういう神経をしているのだろうか。

「おまたせ。」

「ううん、全然。私も今来たとこだから。」

「そっか。それじゃあ行こっか。」

助手席にAを乗せ、運転することに気を戻す。
本当はAの方を見たいが、見たら気持ちを抑えられなくなってしまいそうだ。

海に着く頃には、空は真っ暗だった。
色とりどりに輝く星と、月明かりに煌めく海のコントラストが眩しい。

涼しい海風が二人の間をすり抜ける。
この数十センチが、酷くもどかしい。

浴衣じゃ寒いのか、Aは腕を擦って体温を逃がすまいとしている。
彼氏だったら後ろから抱きしめられるのに、生憎ただの幼馴染の俺にはそんな資格がある筈もなく、そんなAをただ眺めることしかできない。

お団子をしているため露になっている項が色っぽく、白い肌がちらりと覗く。

Aばかりを見ていたら、花火が打ち上がった。
花火大会の始まりだ。

「きれい…」

花火を見上げながら呟くAは、この世のものとは思えないほど美しい。

「そうだね。」

俺は、Aの横顔を見つめながら答えた。

数千発もある花火はあっという間に終わってしまった。
先程までAを照らしていた光がなくなり、表情が窺えない。

「…花火終わっちゃったね。帰ろっか。」

続