シャムロックの花。第四輪

百四十九つ葉 ページ13

宝石目当てか、それとも彼女が発動させたスキル『空白のルーン』のデメリット効果によるものか。

どちらにせよ、執拗に狙い続けられていることは確かだ。

どうするかとエウェルは考える。

「アサシン！」

地上から聞こえたジークフリートの声に弾かれたように地上を見下ろせば大剣を構えているではないか。

真名解放による宝具が発動可能になったのだ。

ならば急いでエウェルはこの場を退避しなければならないのだが、まだスキルによるターゲット集中のデメリットは継続中だ。

どの判断が最短で且つ最良か。

「マシュ！ 第一スキル発動と第二スキルをAに！」
「はい！」

一巡していれば地上から立香とマシュの声が地上から聞こえてくるではないか。

ワイバーン達からの攻撃を避けて地上を見下ろせばジークフリートの後ろに身の丈大の盾を持ったマシュと、その後ろにいる立香がこちらを見上げていた。

先程立香はマシュに対してこの場にいる味方全員に第一スキルである『今は脆き雪花の壁』を付与して防御力を上昇させた。

加えて、エウェルにのみ第二スキルである『時に煙る白亜の壁』を付与して僅かな時間だけ特定の攻撃以外は攻撃が当たらない、所謂無敵状態にさせている。

となれば、考え出せる答えは一つ。

「ジークフリート様！ 今です！」

エウェルごとワイバーン九体に向かって宝具を放ってもらう。

地上は間近まで迫っているうえ、マシュに付与してもらった第二スキルの効果時間は僅かだ。

タイミング的に今しかない。

エウェルが地上に降りてから宝具で一掃するのも可能だが、万が一ワイバーンが立香に危害を加える可能性もあるため今、倒すべきなのだ。

「ジークフリート様」

真っ直ぐと見てくるエウェルに、ゆっくりと頷いたジークリートは真名解放による魔力放出を行う。

「マスター、マシュの盾の後ろにいた方がいい」

盾を構えたマシュの後ろで立香が衝撃に耐えるような構えを取る。

「行くぞ！」

号令と共に魔力が解き放たれ、ジークフリートを中心に膨大な魔力量ゆえに可視化された魔力の風が渦を巻いていた。

ごうごうと風が吹き荒れ、草原の草花が風によって踊らされている。

「邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至る」

エウェルに群がるワイバーン達が異常に気付いたが、もう遅い。

「撃ち落とす！ 幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!」

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