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八十三つ葉 ページ38

部屋を出た立香とマシュは、魔術王の発言によって仕事が増えてしまっている職員がいる管制室へと足を運ぶ。

入室すれば職員達が慌ただしくディスプレイを見て数値の確認、高速でのタイピングをしており少し声を掛けづらい。

「あ、藤丸くんとマシュ、どうしたの?」

一人の職員が気付くと皆が全員一度止めて彼に声を掛けてくれる。

人類最後のマスターである彼を嫌う職員はいない。

彼の人柄ゆえに好かれていると言った方が正しいかもしれない。

日本人特有の人の顔色を少々見がちなところがあるが、それ以上に彼は素直なのだから。

「ドクターはいますか?」
「ドクターロマンなら」
「立香くん、こっちこっち」

尋ねたところ本人の声が左側から聞こえた。

向けばダ・ヴィンチと共に提出された数値をディスプレイで見ているところだったらしい。

作業を止めて対応してくれた職員にお礼を言った二人は、ロマニとダ・ヴィンチの元へと向かう。

「ドクター、英霊召喚をしようと思って」
「……もういいのかい?」

ディスプレイから立香を見たロマニは彼の表情をみる。

魔術王が言った発言に引っ掛かりを覚えていた立香はレイシフト強制帰還後、様子が少し違っていた。

少し考える時間がほしいと彼の我が儘を聞いて、少しだけ待ったのだが今の表情を見る限りもう大丈夫そうだ。

頷く立香に、ロマニはわかったと言う。

「レオナルド」
「だからダヴィンチちゃんだって、何回訂正させるつもりだい君は」
「あぁ、ごめんごめん」
「全く……。はい、立香くん。十回分の聖晶石だよ。いい英霊が喚べるといいね」
「ありがとうダヴィンチちゃん。ドクターも!」

行こうマシュと彼女の手を引いて管制室を出て行く立香は、扉の前で一度立ち止まると職員達にいつもありがとうと一言伝えてから出て行った。

「……良い子だよね、藤丸くん」
「いや本当、彼のために頑張らないと」
「その通り! 彼が安全にレイシフトできるようにみんな解析と次の特異点の座標特定に急いで」

はい! と元気良く返事をする職員達にダ・ヴィンチもよろしいと頷く。

「でも気になるな、あの魔術王の言葉は」
「そうだね、霊基自体を弄ることはできないこともないけど。まず英霊でもない者が召喚されることは普通ではありえない」
「魔術王のはったりともあるけど……」
「言いたいことはわかるよロマニ。別で私の方で調べてみる」
「すまないレオナルド、助かる」
「だーかーらー、私のことはダヴィンチちゃん!」

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作者名:翔べないペンギン | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Information/  
作成日時:2020年2月28日 21時

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