アイを伝えたい

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「 … 生きたい 」



握っている手が濡れて、彼の肩も震えていたから
泣いているのだとわかった。









「 仕事も出来へんし、彼女とは別れたし 」


「 余命宣告されてから人生どん底になった」




ぽつり、ぽつりと呟く言葉に、耳を傾けた。










「 せやけど 」



… ずっとこうしとるの、勿体ないなあと思ってん

と彼は言った。






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「 俺が、どんだけ落ち込んでても

Aさんやのんすけはいつも笑ってくれる 」





顔には出せなかったけれど、それが凄く幸せで

自分も誰かを幸せにしたい、なんて思ったそう。









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「 まあ、まだ何するかは決まってへんのやけど 」


「 もう少しだけ、人生楽しもうかなと思って 」




… ありがとう、と言って彼は笑った。







作り笑いなんかじゃない、初めて見た素の笑顔。









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「 … あ 」


「 可愛い 」








急にベンチを離れたと思ったら、

濱田さんは手に何かを持って戻ってきた。








見ればそれは一輪のスミレの花。

淡い紫色をしている。


季節は秋なのに咲いているのは珍しい、返り咲きのスミレ。





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「 … なんか俺みたいやなあ、 笑」



茎のところが丸く曲がっていて、
濱田さんのなで肩に似てると思ったのだろう

私たちはまた笑った。







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スミレの花言葉は 「 小さな幸せ 」。









… 濱田さんは知っていたのだろうか、

紫色のスミレの本当の意味を。

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