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ごめんな ページ25

どこか少し躊躇っている松田に、しゃがんだ横を軽く叩くと、やがて隣へしゃがみ込んだ。

遠くからは、歓声とアナウンスが絶えず聞こえているのに、ここは静かだ。

(気まずい)

何か、言うべきだろうか。
いや…余計なことを言ってしまいそうだ。

「……悪かったよ」

「え…?」

普段の彼からは想像もつかないほど小さな声が、耳に届く。
思いもしてないそれに、首を傾げた。

「だから…悪かったって言ってんだろ……
その……たまたま…とは言え、触っちまって…」

そっぽを向いたまま、続けてそう言う松田。
その髪から少し覗く耳が、やけに赤いことに気がついて、思わず、ふっと吹き出してしまった。

「松田」

「………」

「耳、真っ赤だぞ」

「!?……この…見んなよ!!」

ばっと耳を塞ぐが、その様子がどうにも面白くて

「ふ……はは、あははは!」

「なっ……笑うな!!」

「はは、いや…面白くってさ

私も悪かったよ、元はと言えば、私のせいだし……あんな状況初めてだったし、結構動揺してた」

「そーかよ…」

「…ま、まあ!今思えば別に減るもんでも無いし、こっちが気まずくて避けてたとこもあるしな…

私も…ごめんな?」

手を合わせて、頭を下げる。

それを見た松田は、ふっと、柔らかい笑みを浮かべた。

「…そうだな、お前がもうちっとその散漫な注意力をどうにかしてくれれば、俺も安心なんだが」

「そんなにか?……まぁ、気をつけ」

「それと!」

じっ、と真っ直ぐに松田に見つめられる。
その眼差しに、思わず口を閉じた。

「……注意力もそうだが、お前は気を許しすぎだ。
もっと危機感を持て。俺らも男だ」

ふい、と視線を外しながら独り言のようにつぶやかれたそれが想定外すぎて、「は?」と間の抜けた声が出た。

「……間違ってもないだろ」

「はぁ?」

「いや、無さすぎる。同性に男と間違われたんだぞ?」

「んな事はいいんだよ!この見た目詐欺師!」

「どこが?」

「どこがって……自覚無しかよ…」

ため息混じりに頭を抱えた松田にますます疑問が募る。

「というか、仮にも警官が未成年に手出そうとしたらダメだろ」

「俺らな訳あるか!万が一そうならねえように気をつけろって言ってんだ」

「投げるから大丈夫だ」

「バカ言うな……あぁもう!おら、戻んぞ!」

「ちょっ…置いてくなよ!」

立ち上がって、足早に去っていく松田の背中を走って追いかけた。


(……こいつのことをしっかりしてるだの、クールだのかっこいいだのなんだと言ってる奴らが可哀想だな)

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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月28日 21時

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