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萩原が戻るまで、互いに入口の壁に背をつけて待つ。
「……」
「………」
「……なあ」
どこか気まずい空気の中、先に口を開いたのは松田だった。
だがその後、言いにくいのか、また彼は口を閉じる。
「何?」
「……いや、大したことじゃねーんだけどよ。
その……傷」
トントン、と松田は自分の口の左を軽く叩く。
それが何を意味しているのか、すぐに分かって「ああ、これ?」と同じ箇所を指さした。
口の左側、唇をかけて刻まれている5センチ程度の古傷。
「気になる?」
「……ちょっとな」
言いながら視線を逸らした松田に「ふっ」と笑いが込み上げた。
「…何笑ってんだよ」
「ああいや、存外松田もそういう気遣いできたんだと思って」
「……バカにすんな」
不服そうに眉を寄せ、腕を組む松田にAは柔らかく笑う。
「これな、フランスにいた時に、通り魔に襲われてできた傷」
「はっ?」
「確か17の頃だから……2年くらい前か?
雨の日で、大学から帰るバス降りた時に、後ろで悲鳴がして。
気づいたら一瞬だった。一瞬でナイフが迫ってて」
当時のことは、衝撃的すぎて割とよく覚えている。
怖くなかったのか、と言われると、驚きの方が勝っていたと思う。
「むしろあの時咄嗟に下がったから口だけで済んだ感じだな。気ぃ抜いてたら、あのまま袈裟懸けでバッサリだったと思うし」
「犯人も捕まったしな」とけらけら笑いながら話すAに、松田はあっけに取られたのか、口が開きっぱなしだ。
「いやー…あん時は驚い………松田?」
「んな……お前……それ………
大丈夫かよ…?」
目を見開いたまま、そう問うてきた松田に「今はな、もう平気」と笑う。
「……待て。17………?」
「なになに?どしたの陣平ちゃん、そんなに呆然としてさー」
「うわあっ!?」
いつ来たのか、松田の肩にニュっと萩原の腕が伸びてきて、昼間のように肩を組んだ。
「いや〜ごめんごめん!自販機売り切れててさあ!」
はいこれ、と言って彼から差し出されたのは、フルーツ牛乳と書かれた瓶。
「昼間はありがとね!それと…風邪ひかないようにちゃんと髪は乾かして!
じゃあおやすみ〜!」
萩原はニコッと笑ってAの頭をぽんぽん、と軽く叩き談話室の中に姿を消した。
「あ、ありがとう……?」
中から女子の黄色い声が上がっていたのは、もう言うまでもないだろう。
「……ところで、新宮お前今何歳なんだよ」
「19」
「未成年!?」
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しゃ〜け(プロフ) - 早桃さん» 早桃さん、コメントありがとうございます〜!!!面白行っていただけてもうめちゃくちゃ嬉しいです!!頑張って更新していくので、今後も是非よろしくお願いします〜!! (2022年12月27日 1時) (レス) id: 8454d3df8d (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - すっごい好きな作品です!面白い!これからも無理せずに更新頑張って下さいね!応援してますぅぅぅ! (2022年12月26日 12時) (レス) @page37 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月19日 2時