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ページ18

萩原が戻るまで、互いに入口の壁に背をつけて待つ。

「……」

「………」

「……なあ」


どこか気まずい空気の中、先に口を開いたのは松田だった。
だがその後、言いにくいのか、また彼は口を閉じる。

「何?」

「……いや、大したことじゃねーんだけどよ。

その……傷」

トントン、と松田は自分の口の左を軽く叩く。

それが何を意味しているのか、すぐに分かって「ああ、これ?」と同じ箇所を指さした。

口の左側、唇をかけて刻まれている5センチ程度の古傷。

「気になる?」

「……ちょっとな」

言いながら視線を逸らした松田に「ふっ」と笑いが込み上げた。

「…何笑ってんだよ」

「ああいや、存外松田もそういう気遣いできたんだと思って」

「……バカにすんな」

不服そうに眉を寄せ、腕を組む松田にAは柔らかく笑う。

「これな、フランスにいた時に、通り魔に襲われてできた傷」

「はっ?」

「確か17の頃だから……2年くらい前か?

雨の日で、大学から帰るバス降りた時に、後ろで悲鳴がして。
気づいたら一瞬だった。一瞬でナイフが迫ってて」


当時のことは、衝撃的すぎて割とよく覚えている。
怖くなかったのか、と言われると、驚きの方が勝っていたと思う。


「むしろあの時咄嗟に下がったから口だけで済んだ感じだな。気ぃ抜いてたら、あのまま袈裟懸けでバッサリだったと思うし」

「犯人も捕まったしな」とけらけら笑いながら話すAに、松田はあっけに取られたのか、口が開きっぱなしだ。

「いやー…あん時は驚い………松田?」

「んな……お前……それ………



大丈夫かよ…?」

目を見開いたまま、そう問うてきた松田に「今はな、もう平気」と笑う。


「……待て。17………?」

「なになに?どしたの陣平ちゃん、そんなに呆然としてさー」

「うわあっ!?」

いつ来たのか、松田の肩にニュっと萩原の腕が伸びてきて、昼間のように肩を組んだ。

「いや〜ごめんごめん!自販機売り切れててさあ!」

はいこれ、と言って彼から差し出されたのは、フルーツ牛乳と書かれた瓶。

「昼間はありがとね!それと…風邪ひかないようにちゃんと髪は乾かして!

じゃあおやすみ〜!」

萩原はニコッと笑ってAの頭をぽんぽん、と軽く叩き談話室の中に姿を消した。

「あ、ありがとう……?」




中から女子の黄色い声が上がっていたのは、もう言うまでもないだろう。








「……ところで、新宮お前今何歳なんだよ」

「19」

「未成年!?」

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しゃ〜け(プロフ) - 早桃さん» 早桃さん、コメントありがとうございます〜!!!面白行っていただけてもうめちゃくちゃ嬉しいです!!頑張って更新していくので、今後も是非よろしくお願いします〜!! (2022年12月27日 1時) (レス) id: 8454d3df8d (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - すっごい好きな作品です!面白い!これからも無理せずに更新頑張って下さいね!応援してますぅぅぅ! (2022年12月26日 12時) (レス) @page37 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:しゃ〜け | 作成日時:2022年12月19日 2時

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