後日談:運命の巡り合わせ《土方サイド》 ページ40
「・・・・・・・・・」
俺は、何も言わなかった。
山南には関係ないというのもある。しかし同時に、山南に希美が利用されたりしたら───。
だから、俺は、何も言わなかった。
「──────彼女は囚われてる」
山南の独白に、俺ははっ、となる。
「過去という悪夢に、トラウマという魘夢に囚われている。───ずっと、ずっと、ずうっと・・・」
いつの間にか、山南は希美のそばに近づき、希美を見下ろす様に見る。
いや、これは見下すと言うべきか。
あいつの目は、総悟のやつと同じような・・まるで新しい玩具を手にした子供のような目をしていた。
「・・・・・・見たのか、あいつの心を」
「酷い言い草をしますね。
「見た事には変わりねぇだろ・・・希美の過去を見た事には───!!」
がちがち、と手をふるわせる俺に山南はやれやれ、とため息を付いた。
「ミツバさんの時には、貴方はそんな態度をしてなかった。なのに・・・彼女の事になると、異常なぐらい肩を貸す。これじゃあまるで─────
「──────」
・・・頭に、きた。
その苛立ちに、唇を噛んだ。
「てめぇ・・・・言わせておけば!!!!」
「おっと、興奮するのも程々に・・・・彼女、起きてしまいますよ？」
刀を抜こうとした俺を、ひらりとかわすように宥める。ふと、希美を見て俺は希美にも危害が加えかねないと思い一歩下がる。
「・・・・これ以上話を続けると、お互いの身が危ういですね。では彼女にこう伝えておいてください・・・・『どうして土方十四郎以外の存在に心を開かないのか』と・・・・」
・・・・一応は頷いたが、それはうわべつらで、本心ではなかった。
誰かが言ってた、言葉には力があって、飽きることなく繰り返された言葉には、現実を歪めてしまう程強い力が。
少女らしい一途な呪い。
愚かで、哀しい呪い。
気がつくと、山南はどこかに去っていった。
・・・俺はあいつが嫌いだ。
伊東の奴が憎いとするなら、山南は嫌いだ。
考えの読めないヤツで、いつも飄々としている。
それに───あいつは、総悟と同じ目をする。所謂サディストと言うやつだ。
「・・・・・・・・・・・」
山南には気をつけるよう、希美に伝えておこう。
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