銀魂ｰ少年よ大志を抱けｰ (ページ37)

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第三十三話:暗夜に逃ぐページ37

ぼんやりとした意識のまま、俺は身を起こす。
辺りを見回すが、高杉の姿は居ない。部屋の明かりは微かに点いている。
「ぁ──────」
悩ましげに息を漏らし、俺は先程の左目に触れる。出血は微かに流れているが痛みが消えた訳では無い。
けれど、身体の火照りはほぼ収まっている。
「・・・・・・・・逃げないと」
部屋に充満する甘い臭いに、不快な表情を浮かべる。
外は雨だ。もう少し経てば人通りは少なくなる。それに季節は夏だから、それが冷たい事はあるまい。
雨で血を落としながら公園に行こう。そして、何事も無かったかのようにすれば─────。
そう決めると、俺はゆっくりと立ち上がり歩きだす。
誰もいない檻の中は静か過ぎる。
きっと、この姿を見たら土方はとても心配するだろう。彼は俺に対して甘いから。
俺は少しだけ安堵する。
ふと見ると、ヤツの気遣いなのか片隅に置いてあった俺の荷物があり、それら拾う。
そして紫水晶の鉱石を落とし踏んで割る。
ぱりん、と鮮やかな音がして、破片が俺の周りを包み込む。
・・・・・最悪の日だ。そんな事を、思い浮かんだ。
そしてまた、視界は暗転する。

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もしもしと声がした。俺はその声に反応するように、ゆっくりと目を覚ます。沖田と坂田の髪の毛を足した天然パーマの青年の顔が近くにあった。
「───────」
藤堂公介。
俺の弟子の様な存在。
「良かったです・・・目を覚まして」
「・・・・・なんで、お前が」
俺は平静を装いながら、藤堂に問いかける。
「外の見廻りをしていたんですよ。そしたら、左目から血を流した希美さんが倒れていて。意識がなかったんで、屯所まで運びました」
藤堂から状況を聞き、頭の整理がようやくついた。
どうやら逃げてる間に気を失っていたんだろう。そこにたまたま見廻りをしていた藤堂が駆けつけて、俺を屯所まで運んだ。
左目に触れると、ガーゼの感覚がした。どうやら包帯が巻かれてるらしい。
「・・・・・・・・・土方は」
条件反射で藤堂に問う。
「今は別の部屋に居ますけど、さっき山崎さんが「副長に伝えに行く」と言いましたから恐らく────」
ばんっ、と襖が開く音がした。
そこには、息を切らした土方の姿があった。