第二十九話:熱帯魚のアクアリウム ※微裏表現あり ページ33
二つだったのが一つに溶け合う感覚を存分に味わい、体を何度も震わせ、縋るように互いの体を擦り付け合う。
お互いの息が混ざり、息に混ざった声が絡み合って、どっちがどっちの声だか分からなくなる。
互いの愛情を確かめるように口付けを繰り返し、手探りで互いの指を絡ませる。
離れないように、繋ぎ繋ぎ止めるように。
俺達にとってはこれはただの確認行為で、心の虚しさを埋めるに過ぎない。けど、愛しさが溢れ出てくる。
胸に縛り着く苦しみや恐怖が、この時だけ忘れられる。言うなれば、土方の腕の中がとても落ち着くのだ。
「・・・・・依存してるみたいだな。まるで」
俺は、そんな小言を漏らす。
何せ俺は・・現に土方の運命を狂わせた。一瞬の異常が、彼の運命を狂わせてしまった。
たまに思うのだ、土方は俺と会わなかったらまともな道に進めただろうと。こんなどうしようもない
そんな焦燥に、駆られる時がある。
横になって寝ころぶ土方を甘えるかのようにして抱きつく。
「希美・・・・・なにか、あったのか?」
普段は自分から甘えない俺が甘えてきたのを見て、不思議に思ったのか土方は俺に問いかける。
「・・・・・なぁ、俺はお前に依存してたらダメなのか?偶に、思うんだよ・・・俺の存在がお前を弱くしてるのか、俺の存在はいらないのかってさ・・・」
ぽつりぽつりと、俺は本音を吐き出す。不安を、焦燥を、土方に吐き出す。
すると、土方の手が俺の頭に触れ、優しく撫でる。その手は、とても温かい。
「そんな事ねェよ・・・実際俺だってお前が居ないと、どうしようもなく不安になるんだ。まぁ、俗に言う共依存ってやつか・・・けど、どっちもどっちだよ」
土方の手が頭から伝うように降りてきて、頬に触れる。
「だから、一緒に居たって良いんだ。希美。」
そう言ったあと、土方は俺の左目の瞼に口付けをした。
「・・・・・・・ばか」
怖くなるぐらいの安心感を土方から与えられていることに胸がいっぱいになって、それが照れくさくて、弾けてしまいそうだった。
月灯りが照らすアクアリウムで、イソギンチャクの襞の中で体を寄せ合って休む熱帯魚。
これ程、明日が来ないで欲しいと願ったのは、久しぶりかもしれない。
第三十話:雨音と狂気→←第二十八話:琥珀糖の雨 ※微裏表現あり
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