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第二十四話:極限死《ジェイシス視点》 ページ28

「あ─────あぁ」
一瞬の出来事だった。わずか一瞬で、右手首が切り落とされた。白衣の右の裾が血で真っ赤に染る。
「・・・・貴様、それは」
「糸鋸の応用でござる。拙者の弦は鉄の強度を誇る。それに如何にして最小の面積に、最速で、最短で力を加えるかを考える。それさえ駆使すれば────」
万斉は指を軽く動かす。
指には何重にも“弦”が巻きついていて、まるで人形師のように、指揮者のように───
「人を殺す事は、可能でござる。」
右手首を斬られた私は、その右手首を拾って繋ぎ合わせようとすぐ様移動する。
河上が指をくいっと振り上げ、ついっと降ろす。
私の耳にひうんと音を聞き取ったと思うと今度は左足首が切断された。
「あ゛ゔ───っっ!!」
淑女らしからぬ声が漏れ、足が縺れたかのように転ぶ。地面に這いながら、きらきらと血を光らせている弦が視認できた。
そして、ひうん───と、河上は弦を回収した。
ふぅ、ふぅ、と息を荒らげる私を、河上は見つめる。
急速に失われていく、自分の血液。気が段々と遠くなる感覚。
幾ら私が吸血鬼の血を持つクオーターとは言え、右手首と左足首を切断されて、痛くない訳が無い。
刀の切っ先を私に向け、口を開く。
「ぬしは吸血鬼の血が流れていると聞いたが・・・幾ら主でも手首と足首を斬られて仕舞えば、暫くは動けまい」
河上は声なく笑みの形を作った、それも楽しげに。
だが、その程度では収まらない。私の怒りは、余計に強く燃え滾っていた。
「貴様は・・・貴様は、裏切り者は殺すと言ったな。だがそれは、ただの搾取に過ぎぬ!!!!
貴様は彼の・・・クロメアの改心する余地を、未来を、殺したに過ぎない!!!!誰がが言っていたな、人を斬るものは、人の痛みを分からぬ者だと・・・・貴様がやった行為は、私の願いを!!!!彼の未来を、殺したのだ!!!!!!」
「そんな事───」
分かっている、と河上は呟き、絶句した。
無理もない事だ、私の右手首と左足首が、時間も待たずに回復したのだから。
がぎぃん、と刃と刃が触れ合う音がする。
「ふっ・・・・随分と、デタラメな人間でござるな」
呟くその口元は、笑っている。

第二十五話:Anamnesis《ジェイシス視点》→←第二十三話:千人斬りのロンド《ジェイシス視点》



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設定タグ:銀魂 , オリジナル   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:梨花 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2020年8月3日 23時

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