第十八話:迎撃開始 ページ21
ジェイシスはすぐ様俺の腕の傷を治し、辺りを見る。
うじゃうじゃと湧き出るように、ブラックドックはそこに居て、俺達の方を見て睨む。
「大量に居るな・・・」
北大路はそう小言を漏らし、ブラックドックの大群に向かおうとするが、ジェイシスに差し止められる。
「暫し待て。幾ら剣の腕がたっている貴公らでも、このブラックドックを空いてをするのは無謀だ」
「じゃあどうするってんだ、女史先生?」
西野の問いにジェイシスは返答するかのように、口角を上げる。そして
「紅蓮の悪魔:フラウロスよ。剣を握りし勇士に加護を与えよ」
ジェイシスは虚空をなぞるように中空で文字を刻む。文字は投影されたかのように、九兵衛達の刀に重なった。
遠い世界、神代における魔術の紋章。シジルと呼ばれる印が働き、途端───炎に似た灯火が刀に灯る。
「これは・・・」
「フラウロスの加護を、貴公らの刀にエンチャントをした。これで異常にも少しは対抗出来るはずだ」
ジェイシスはぼやく。
「成程・・・なかなかやりますね、女史殿」
「どうって事などない。優里菜、希美。貴公らは私に加速系のエンチャントをかけてくれ。急いで蔵へと移動せねばならぬ」
「・・・蔵に行けば、解決するもんなのか?まぁいいさ、キューん所の異常気象が治れば、後はお前に任せるつもりだよ」
希美の発言にジェイシスは、微笑むように笑う。
「さぁ、迎撃開始と行こうか」
それが合図のように、ブラックドックは一斉に襲いかかって来る。その様子はまるで、妖精の大軍─────ワイルドハントの様だった。
そんなブラックドックの大軍を、九兵衛達は難なく迎撃している。勿論、優里菜も魔法でこれらを迎え撃つ。
俺は正直驚いた。何せこの類の異常は、九兵衛達にとっては初めてなのかもしれないのに、難なく迎え撃っているのだ。そもそもあの一件で、俺達が切り札で術式を使った時は為す術もなかったのに・・・・とんだ成長ぶりだ。
そうこうしているうちに、俺達は蔵の中へと到着した。
「優里菜。防護術式を!」
「あいあい!─────〈ミントプロテクション〉!」
優里菜がそう言うと、緑色のドーム状の結界が広がるように蔵を覆った。
そして蔵の傍らには・・・・ホルマリン漬けされた、青色の双眼があった
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