第三話:嵐の前の静けさ ページ3
「お前、何歳だ」
取り敢えず話をしようと、愚妹がやってるように自分から話しかけてみる。
「えっと・・・最近十八になって、それを機に田舎から出てきました」
「十八、じゃああのクソさ・・・じゃねェ、沖田と同年代か」
「はい。沖田隊長は俺にとって雲の上の存在の人です!とても強くて大人で・・俺なんかまだまだガキだから、もっと人間的に成長したいですよ」
藤堂は髪を掻いて、照れ笑いとも捉える苦笑を浮かべた。十八歳は今で言う高校三年・・・俺はふとあの日の光景がフラッシュバックする。
卒業間近の日に起きた、あの地獄を。
阿鼻叫喚の地獄絵図を。
あの事件から生き残った影響なのか、その年代の奴らを見るとどうしようもない焦燥に駆られる。それは自分の戒めなのかは分からない、けれど胸辺りが熱くなる。未来を殺した、俺の罪────
「・・・・春咲さん?」
「────っは」
顔の前に、藤堂の顔が大きく映る。
「どうか、しましたか?」
藤堂は心配そうに俺に問いかける。
「いや、悪ぃ・・・少し考え事をしてた」
俺は少しだけ笑う、それは誤魔化すように。
そして俺は胡座をとるように座る。
「お前は十分しっかりしてる、俺なんかと違って。俺はお前と同じ歳の時はどうしようもなかったからな」
「そうなんですか?」
「あぁ、まぁ俗に言う・・・レディースとか女番長、みたいなもん。けど・・・悪さをしすぎた結果、俺はそれにバチが当たったんだよ。そして今は・・欠陥が色々と出ちまってるんだよ・・・」
「そんな事ないですよ」
窘めるようでもない、素っ気ない口調でもない。けど少し強めにそう言った。
「噂で聞いたんですよ、春咲さんの事。どんなに傷ついても、ぼろぼろになっても仲間の為なら身を呈することが出来るその強さ。それに副長が言ってました「希美の友達──とは言わねぇが、安らぎの場所になってくれ」って。それで察せましたよ、春咲さんは繊細な人だって。でも確かに信念がある・・・欠陥があるようには、見えないです」
かっこいい人です、と付け足した。
俺は驚いた。上辺面で俺を褒める奴は沢山いたが、藤堂のその言葉は上辺じゃない、素直にそう言ってる。
こいつは───純粋だ。純粋で、素直だ。
まだ穢れのないキャンパスのようだ。
俺はそんな藤堂に、笑みをこぼす。
「ホント、お気楽だな。藤堂」
「いや、それ程でもないですよ・・!」
「褒めてるつもりじゃねぇから」
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